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龍が如く2 庄司英徳&坂本英城 楽曲インタビュー

■Siliconera 様http://www.siliconera.com/からの「龍が如く2」インタビュー

庄司英徳HidenoriShoji、坂本英城HidekiSakamoto

龍が如く2

PlayStation(R)2専用ソフトウェア「龍が如く2」では主人公「桐生一馬」をとりまく極道社会による計画犯罪の闇を描いた世界が繰り広げられる。今回はこの「龍が如く」の世界を演出する音楽を手がけた作曲家の中から株式会社セガの庄司英徳氏、そしてゲーム音楽制作会社ノイジークロークの坂本英城氏にそれぞれの音楽制作の裏側のお話を伺った。庄司氏は言うまでもなく、初代「龍が如く」から作曲を担当し注目を集めた動的でエネルギーにあふれたスタイルの音楽でファンをより一層惹きつける。今作から担当の坂本氏はノイジークロークの代表取締役を務め、そしてあの話題のゲーム「無限回廊」の音楽を手がけた。

二人はまさに今注目の作曲家である。

インタビュー: ジェリアスカ
翻訳:佐藤 領二郎

龍が如く2とは?

—— 欧米では現在、「龍が如く」シリーズ1作目から2作目へ進むという段階ですが、主人公「桐生」の新しいストーリーを欧米のゲームプレイヤーたちに向けて簡単にご紹介ください。

庄司英徳: 今作は1作目の「消えた100億」を巡る一連の事件から1年後のお話になります。
桐生は慎ましくも幸せな日々を送っていたんですが、東城会の5代目である寺田の死を切っ掛けに、様々な思惑や陰謀が渦巻く事件に巻き込まれて行きます。東城会の過去など、今まで語られなかった部分も徐々に明らかになっていきます。
前作は神室町の中での事件が主でしたが、今作は「西と東の覇権争い」とストーリーの幅も広がっていて関西という新たな要素が入っていますので、歩けるステージも神室町だけでなく関西の街も歩ける様になります。同じ日本の街でも西と東では見た目もかなり違うので、その辺りも楽しんでもらいたいと思います。

—— 「龍が如く」シリーズが他のゲームタイトルと一味違うのが、リアルさの追求というのがあると思います。例えば、ゲーム中に出てくるレストランなどは実際に現実にあるお店だったりといったような。このような、シリーズを通して「現実性を追求する」というアイディアから、庄司さんが作曲をなさる上で受けた影響や、特に気を配った点などはありましたか?

庄司英徳: 「現実性の追求」と一言で言ってしまうと語弊がありますが、シリーズを通して根底に流れているのはエンターテインメントだと思っています。細かい所を言えば嘘だらけの世界です。ですが、その嘘を感じさせない様にする事が「エンターテインメント上のリアル」だと思います。ゲーム中のレストランが現実にあるお店というのも、嘘を感じさせないアプローチの一つに繋がっていると思います。
それらの前提の上で楽曲はどういう役割を担えるか。そう考えると世界感の確立という一言に尽きます。そこで生活している人達が居て、その中でイザコザが起きた様な”ライヴ感”といいますか。そういう”泥臭さ”といった事をコンセプトに作曲や選曲をしましたので生弾きの楽器が多いです。その辺りでエンターテインメントながらリアルに感じる世界感に一役買えていると思います。

—— 坂本さん、インタビューにご協力頂きありがとうございます。早速ですが、今回「龍が如く2」の音楽を担当なさることが決定したいきさつを簡単にお話いただけますか?

坂本英城: セガのサウンドマネージャーでおられる冨田晴義さんが私たちの作るサウンドに興味を持って下さり、まず最初に「スーパーモンキーボール ウキウキパーティー大集合」(2006年作・Wii)の作曲を担当させて頂いたんですね。それがきっかけでセガさんとお仕事させて頂くことになりました。元々、私が初代「龍が如く」の大ファンでしたので、その熱い思いを冨田さんに伝えましたところ、「龍が如く2」のご依頼を頂けることになりました。

—— ゲームのオリジナルの曲をお聴きになり、作曲家の庄司英徳さんの曲からどんな印象をうけましたか?また、続編の音楽を担当される上でどのようにして、坂本さん独自の音楽を取り入れようとお考えでしたか?

坂本英城: 庄司さんはギターで作曲をされるのに対しまして私はピアノで作曲をするというところが最も大きく異なるところだと思います。
庄司さんの曲は私にとっては非常に刺激的なものばかりでした。とても独創的かつエッジの利いたパワーとスピードがある曲で、楽曲のエディットの方法や楽器の使い方など、勉強させて頂くことばかりでした。私の音楽はどちらかというと、クラシックがルーツとなっており、和声やメロディを重視する傾向にありますので、そういう意味でも庄司さんの楽曲とうまい棲み分けが出来れば良いなという思いはありましたね。

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「極道」というテーマ

—— 「龍が如く」と同じように極道社会を取り扱った映画や本などは日本にたくさんあると思いますが、その中でも庄司さんが特筆すべきものはございますか?また「龍が如く」では、どのような形で極道社会の忠実な描写と同時に独自の世界観を表現していると思いますか?作曲の面ではこのような背景からどういう影響を受けましたか?

庄司英徳: やはり「仁義なき戦い」がまず挙がりますね。というか日本人としては挙げなくちゃいけない気すらします(笑) ドラマのシリーズが重なる度に当然曲も増えていて、それらの曲のジャンルは様々です。「キル・ビル vol.1」でも使われ たあの有名な曲も仁義シリーズからですしね。 「ステレオタイプでこういう曲じゃなくちゃいけない」ということが無い事を教えられた気がしたので、「龍が如く」シリーズの作曲の発想もあまり縛らず、自由にしました。
また、描写そのものについてはなんとも言えませんが、サウンド担当の立場としては声優さんの演技についてできるだけアニメっぽい演技にならない様にしようと音声収録ディレクターと密に話をした事を覚えています。怒号や人を脅すシーン などでは、アニメ然とした演技だとすごく薄っぺらくなってしまうんです。そういう演技を出来るだけ排除した事で独自の世界観、空気感を生み出す事に成功したんだと思います。

—— 戦闘シーンでは緊迫感を出すのが重要かとは思いますが、そのために庄司さんが用いた楽器やテクニックは何でしょうか?また使われている楽器という観点から個々の戦闘シーンの音楽に違いをつけるやり方はどうプランされましたか?

庄司英徳: 「龍が如く」シリーズの戦闘であるという事もそうですし、僕自身がギタリストという事もあったのでディストーションギターを基本にしてアッパーな曲を入れる様にしています。ただ、今作はガラの悪さアップのアプローチとして、自分の曲では同じディストーションギターでも意識してカッティングを多用しエッジを立てました。また、ギターを含めてサイレンの様な音、弾き方の音を入れる様にしています。これはサイレンの音を聞くと不安、恐怖、緊張など負の連想をしやすいという心理効果を狙ったものです。他は、セオリー通りですがわざとスケールを外したりしましたね。

個々の戦闘シーンの音楽の違いのプランとしては、端的に言ってしまえばジャンルを変えてしまう事ですかね(笑)必然的に使う楽器も変わりますから。今作のエンカウントバトルを聴いてもらえればわかる通り、同じエンカウントバトルでも西と東でジャンルそのものが違います。最初のリストの段階からイメージで「関西のエンカウントバトルはJazzyに!」「ラストバトルはこう!」というように各シーンのジャンルを決めてしまっていたので「違いを出す為の楽器選び」という意識はないですね。

「無限回廊」とは対照的な「龍が如く2」

—— 以前に「無限回廊」の音楽について坂本さんのお話を伺いましたが「無限回廊」特設ページを参照、「無限回廊」では弦楽四重奏の美しい音色が特徴として挙げられました。それと対照的に今回は、エレキギターを始め電子音楽と生楽器の融合が見受けられます。 「無限回廊」とはまた違った編成に特別にチャレンジを感じたことなどはありましたか?

坂本英城: 「無限回廊」の場合は、圧倒的に制限が多く、大いに作曲力を試された非常にハードルの高いプロジェクトだったと思いますがある程度完成形を想定しながら作曲を進めることが出来ました。
本作は逆に、格好いいリフ、音色のチョイスやエフェクトの使い方などが重視され、「無限回廊」の時とは手法も工程も大きく異なりましたし、制作中、自分でも最終的にどのような楽曲になるのかわからないという楽しみ と自分自身へのチャレンジという気持ちは強く持っていましたね。電子楽器にしろ生楽器にしろ、それにしかできない表現があるのでそれらの融合が面白い効果を生み出すことを期待しつつ制作致しました。

—— 曲目Evil Itself, North Menace, Beast Itself で使われています、「歪んだボーカル」は大変特徴的だと思います。
このアイディアを使おうと思ったいきさつはなんでしょうか?また、レコーディングからエフェクトをかけるまでのテクニック面でのお話をお聞かせください。

坂本英城: 元々私はクラシカルな音楽以外にもデジロックやビッグビートなどの音楽も大好きで良く聴いていましたが、ボーカルに関してはあまり破滅的なエフェクトを掛けているアーティストが居ないと感じていたんです。私なりの今作のバトル曲に関しての楽曲コンセプトはとにかく「ぶっ壊す」ということだったんですね。中途半端は嫌だ、と。ボーカルもひとつの楽器と見なして、何を言っているかわからないくらいのエフェクトを掛けてみたところ意外に格好よかったんですね。

加工の工程としては、あり得ないくらい強めにコンプレッションを掛けたあとギター用のエフェクターを引っ張り出して来まして、フランジャーやらコーラスやらを通して最後にメタル系のディストーションで破壊する(笑)、みたいな感じです。特に方法論は無くて、かなり感覚的に作っていました。

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「龍が如く2」のストーリーと音楽

—— 「龍が如く2」のシナリオは馳星周さんが監修されましたが、庄司さんが初めてストーリーをお読みになったときの印象はどういうものでしたか?全体を通してストーリーに合った曲作りをするために意識されたことはなんでしょうか?

庄司英徳: やっぱ極道は怖いなと(笑)桐生が初めて龍司に出会うシーンなんて見てると、こんな怖い世界にはいられないなーと再確認できます。あと、お話の規模が大きくなったこともあってエンターテインメント性が強くなった印象を持ちました。
そういったシナリオはこのゲームの基礎なので、穴が空くほどよく読む事が必要になるんですが、ストーリーに合った劇伴曲作りをする為には『制作者とプレイヤーの両方の視点で読む』ことが重要だと考えています。
なぜかというと、劇伴曲はプレイヤーの心情起伏の助長が最大のポイントですから、プレイヤー視点で読まないとそのポイントを外してしまいますし、製作側としてここで何を伝えたいのかというシーンの意図を汲み取らないとシーンの大事な部分が伝わらなくなってしまうんです。だから二つの視点でシナリオを読んで、ブレない芯を自分達で持つ事が重要になるんです。
今作の劇伴曲達は、僕が付けたシーンは5シーンくらいでそれ以外のほとんどは外注さんにお願いしましたが、どれもストーリーやシーンにマッチした劇伴曲だと思っています。内作外作を問わず的確な劇伴曲が出来たのは、サウンド部隊がその芯を持てていたからという他にありません。

—— アルバム「龍が如く 龍が如く2 ORIGINAL SOUND TRACK」ではこの2作分の曲がひとつのセットになっています。さらに今回は庄司さんと大勢の音楽家とのコラボで完成したサントラですが、制作の経緯で特に印象に残ったことなどはございましたか?

庄司英徳: 1作目、2作目と2タイトル分ですから、確かに社内外を問わず様々な音楽家が携わりました。内部では部署の垣根を超えて伊藤さん、花田さん、小河さん、セガ以外の方では既にお馴染みとなっている坂本さん、そして日比野さん、ボーカルではMAKOTCHさん、YURIさん、TOMICAさん、陽季さん、河井さん。ほとんど挙げちゃいましたが(笑)こんなに沢山の方と仕事ができたという事の一つの集大成という意味で、サントラを出せた事を本当に嬉しく思います。

また、サントラを製作するにあたってチームのデザイナーと話していた時に印象に残った一言がありました。
「ゲームのサントラって、大体の曲がフェードアウトしますよね」という一言でした。話を聴いてみると、そのデザイナーが言うには、サントラというよりただのデータ集みたいで寂しいという意見でした。言われてみれば確かにその通りだな!と思いました。なので、以降のサントラでは自分の曲は出来る限り起承転結の”結”を付けようと決めて「龍が如く 龍が如く2 ORIGINAL SOUND TRACK」でも事情があるもの以外はフェードアウトで終わるパターンを無くしました。ゲームに組込まれている部分はそのままにして結びの部分を付けるという作業はなかなか根気がいる作業でしたが、それで聴いたユーザーが少しでも愛着を持ってくれたらもうそれだけで十分満足です。
そして何よりも、サントラを出してくれというユーザーからの嘆願メールが非常に多かった事が一番強烈に印象に残っています。本当に嬉しかったです。それらのユーザーの声が無かったらサントラはきっと出なかったでしょうね。それを考えると、自分が過去に携わったサントラの中で一番大きく、そして重いサウンドトラックになりました。

—— スタジオ、ノイジークローク全体としての取り組みでは今回の「龍が如く2」の音楽製作ではどういったお仕事がありましたか?

坂本英城: 主要部分のサウンドは庄司さんの方で制作されておりますので、ノイジークロークでは、いわゆるゲーム全体を背後からフォローするような形で楽曲アサインをすべき箇所などのアイデア出しをセガさんと行いながら必要と思われる箇所のサウンド制作を進めて行きました。

たとえば、イレギュラーなバトル曲、メインストーリー以外の動画劇伴曲、キャバクラやホストクラブの店内BGM、キャバクラ経営の曲、動画への効果音制作とアサイン、ボイス編集などを担当致しました。全般的にほぼ私が制作致しましたが、一部BGMや効果音の制作、ボイス編集などはノイジークロークのスタッフで制作しております。
うちのスタッフも皆「龍が如く」の大ファンだったこともありまして、最後まで無我夢中で制作を進めていきました。

—— 「龍が如く2」ではドラマさながらのムービーによりユーザーをより作品の世界に引き込むことに成功したと思います。
このムービー部分の音楽はどのように作られたのでしょうか?また効果音についてもその制作手法についてお聞かせ頂けますか?

坂本英城: ムービーの音楽は、他のバトル曲などとは制作方法がまったく異なります。私の場合は、シーケンサーに動画を同期させまして、その動画を見ながら、テンポなどは意識せずピアノを弾いて録音します。その骨組みに楽器を足したりミックスを調整したりして曲として完成させます。
このように作ることで、ムービーの中のキャラクターの心の動きや、身体の動きに合わせて楽曲に変化をもたらすことができます。シーケンシャルな楽曲が合うシーンでは、逆にまずリズムトラックを配置し、動画の展開に合わせてテンポを調節して、楽曲の根幹を作り、その上にベースとギター、シンセなどを充てていくという作り方をしました。

効果音も非常に重要なファクターです。動画上のキーとなる表現を楽曲で演出するか効果音で演出するかは、それぞれの担当者の間で意思の疎通が図られます。リアルな情景描写音については、映像に見えている部分の音だけ付けてもダメでたとえば本作の冒頭部分に、ビル火災のシーンがあるのですが、映像では表現されていない要素、たとえば遠くから来る何台もの緊急車両の音などを足すことで臨場感を増しているわけですね。
このように効果音制作には豊富な想像力も必要になってくるわけです。

—— シンガーソングライターでいらっしゃった(故)河井英里さんが、お亡くなりになったというお知らせは北米でも大変遺憾なニュースとして取り上げられておりましたが、「龍が如く」シリーズで河井さんと一緒にお仕事をするというのはいかがでしたか?またシリーズを通して彼女の存在というのは大変重要だったと思うのですが、一緒にお仕事をされた庄司様の思いをお聞かせください。

庄司英徳: 最初に一報をもらった時は動揺を隠せませんでした。本当に残念極まりないです。ボーカリストとしてもそうですが1人の作曲家としても彼女を尊敬していたので、仕事をご一緒できた事は本当に光栄で、誇りに思っています。また、「龍が如く」シリーズでは設定がクリスマス前という事もあったので『本編が暴力的であるならばエンディングは反対に天使的・聖歌的にしたい』という製作意図がありました。そのため選曲にも気を配り、ゲーム中で起きた様々な事件を浄化する様なユーザーにとって存在の大きな1曲になればいいなという願いもあり、それを具現化するのには万人の心を打つ透明度の高い河井さんの歌声はまさに必須でした。柔らかい人当たりの彼女との仕事はすごくスムーズで、歌の収録では助けて頂く場面も多かったので、今後も是非とも一緒に仕事をしたいと思っていましたが、今となっては叶わぬ夢となってしまいました。
「龍が如く2」のスタッフロール曲が河井さんとの最後の仕事になってしまった事は本当に無念でなりませんが、河井さんは今後もずっと僕の目標です。

Siliconera 様の英語原文ページはこちら
Yakuza 2 Music Interview - Hidenori Shoji and Hideki Sakamoto

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