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第三章 『こだわり』『楽曲はこのようにできていく』

制作に当たってとくに留意されたこと

坂本  「当然全ての面でこだわられたとは思うのですが、特に『ここはこだわった!』という部分はありますか?」

イシイ  「ええ。やはり全ての面で妥協せずに制作を進めていきました。スタッフワークからしてそうでして『この人ともう一度仕事がしたい』と思えるスタッフだけに声をかけて、再集合したんですね。古田さんは『金八先生』でとても良く演出を引っ張ってくれたし、飯野さんは『忌火起草』ですごい画面作りをしていたし、中嶋さんはずっと僕と組んで素晴らしいサウンドディレクションをしてくれています。こだわりを持って作品作りをしてくれるメンバーが集まったチームだったので、このメンバーが、言葉は悪いですが、みんな勝手にこだわって勝手に喧嘩してくれれば、どんどんクオリティが上がっていく、と(笑)。そういった中で、殴り合いの喧嘩にはならないように、僕は収めているという(笑)」

一同  (笑)

イシイ  「ですから、どこかにこだわったという意味では、スタッフにこだわった、思います」

坂本  「いやぁ、素敵なお話ですね」

楽曲のイメージ

川越  「続きまして楽曲のお話に移らせて頂きたいと思います。今作の楽曲のイメージなどは中嶋さんがお考えになられたのでしょうか?」

中嶋 「今回の作品については、演出側に『どういった曲が必要なの?』と聞いて、私はそれを作曲家に翻訳するというようなイメージですね。私が『こうしたい!』というのもなくはないですが、古田さん、飯野さんの方が思いが強いのではないかと思っています」

坂本  「中嶋さんのご指示の仕方が、語りすぎず、雰囲気だけをまとめてくださっていて、とても制作しやすかったです。せっかくですから、曲を流しながらお話を致しましょう」



■ 『出動』 (再生箇所 : 亜智編 10:40 「女の子と逃げる!」 開始後1曲目)

中嶋 「この曲は一発でOKでしたね。」

古田  「ええ。こちらとしてはキーワードを1つと、こんなシーンで使います、という事だけを中嶋さんに伝えたので、いまこうして振り返ってみると中嶋さんがいい翻訳をしてくれてたんだなあ、と思います。中嶋経由で坂本さんから上がってきたものは『コレ、コレ!』っていうものが結構多かったんです。ですから、とてもスムーズに進んでいきました」

坂本  「あ、でも完全なダメ出しもありましたよね?(笑)」

古田  「完全なダメ出しは・・・どれでしたっけ?(笑)」

坂本  「中嶋さんのせいではなくて、僕が完全に解釈を間違っていたものが色々と・・・」

古田  「色々と・・・ありましたっけ?(笑)」

一同  (爆笑)

イシイ  「完璧な仕事をした記憶しかないんだ?(笑)」

古田  「美しい思い出しかありません(笑)」

一同  (爆笑)

中嶋 「たしかに制作初期の頃に『このキーワードはこっちの方向性に持っていくんじゃなくてそっちの方向でいきましょう・・・』というようなやり取りはありましたね」

■ 『緊張』 (再生箇所 : 加納編 11:35 「電車に乗り込んで」 開始後1曲目)

中嶋 「この曲はゲーム中めちゃめちゃ掛けましたね。いかに目立たずに雰囲気を出すか、といった試行錯誤でピアノ抜きのバージョンを頂いたり」

坂本  「そうですね。ピアノがやや具体的なのでループ感が出てしまった感もあるので、どちらのバージョンも併用していただいているんですよね」

中嶋 「すごく便利な曲でしたよね?」

イシイ  「古田さんは『メロディがあまり立たずに雰囲気だけを伝える曲が欲しい』というのはよく言っていたよね」

古田  「そうですね」

イシイ  「映画『セブン』とかを実例に出しながら。あと、『LOST』なんかの曲で、特にBGMを意識しない限り、知らない間にかかっていて、うまく雰囲気を盛り上げて消えていく、というような、そういうのがいいんじゃない?と言っていたんですが、古田のほうにもそういう感覚があったみたいで」

中嶋 「プレイしていてそういう感じは出ていました?」

イシイ  「うまく出ていたと思いますよ」

飯野  「こういう曲はとても使いやすくて、気づいたら使ってしまっていました。あとでリストにまとめてみると『あ、またこの曲使っている』、と(笑)」

■ 『弛緩』 (再生箇所 : 加納編 11:05 「留美からの電話」 開始後1曲目)

坂本  「続きまして『弛緩』です」

古田  「僕は加納と御法川の演出を主に担当していたんですが、加納がちょっと肩の力が抜けたシーンになると、すぐ、この曲をかけよう、としてましたね(笑)」

一同  (笑)

古田  「最初に1回、気持ちよくかけちゃったもので、後に似たようなシーンが出てきたときに、この曲をかけないのは失礼な感じになってきて」

坂本  「誰に対してですか?(笑)」

一同  (笑)

坂本  「掛かるかな?と思うといいタイミングでこの曲を掛けていただいていて嬉しかったです」

古田  「かなり頻繁にかけています。使い勝手がよくって(笑)」

飯野  「この曲がかかると、プレイヤーとしては(制作者側が)落としたい感じと言うか、すごく耳に残るので、『これが来たら、脱力で読めばいいんだな』と分かりやすいアナウンスにもなっていますよね」

古田  「そうですね。緊張したシーンが続くお話だとは思っていたので、ほどよく息抜きはさせてあげたいな、と。シナリオがもちろんそうなっているのですが、それを後押しする意味で、プレイヤーにうまく伝わったかと思います」

坂本  「いい意味で記号化していましたよね」

古田  「そうですね」

坂本  「僕は最初にこのご指示でこの曲を作ってしまいまして・・・うまくタマ編で使っていただけてよかったです」

(坂本、『脱力』 (再生箇所 : タマ編 11:10 「野金ビルへ」 開始後1曲目)を再生)

古田  「ああ、これですね。タマのキャラクターにベストマッチで、多く使いました。最初はひょうきんなオチのバッドエンドなどにもっと使っていたんですが、周りのスタッフに『使いすぎだ』と怒られてしまいました」

坂本  「この曲・・・曲としてそこそこ主張もしちゃっていると思うのですが、使いやすいですかね?」

古田  「使いやすかったですね。バッドエンドになったときに『バッドエンドになった』というスイッチが入った感じがすごくするんです」

坂本  「そういった意味で言えば、バッドエンドというご指示で作った曲が何曲かあるんですが、いい感じでゲームを進めていて、その曲のイントロが流れ出した瞬間に、僕にだけ『ああ・・・バッドエンドなのか・・・』と、もう先が分かるじゃないですか?なのでバッドエンドの随分手前から凹んでました。これ、役得なんでしょうか(笑)」

一同  (爆笑)

■ 『真心』 (再生箇所 : 亜智編 12:50 「助ける理由」 開始後1曲目)

坂本  「この曲はものすごくいいシーンで使っていただいてありがとうございました」

古田  「いえいえ。この曲が流れるパートは、音楽がないときは割とサラサラと流れていたんですが、音楽を入れた時に、プレイしたスタッフが『泣いちゃった』という話を聞きまして。最初はわからなかったんです。どこで泣いたんだろう、と?ただ、音楽を乗せてみた直後だったので、これはまさしく音楽の力だな、と」

坂本  「加納と留美の父とのシーンですね。ありがとうございます!そう言って頂けると本当に嬉しいですね」

古田  「ここはサウンドノベルの悲しさなのですが、プレイヤーのタイミングで曲の終わるタイミングも様々なわけで、このシーンの終わりはフェードアウトですが、僕はいいところでバシッと決めて終われたら、もっと感動できるんだけどなあ、と思ったりもするんですよね」

坂本  「それは以前、飯野さんともお話させていただきましたよね。普通のスピードで読んでいれば、何分何秒辺りに盛り上がる部分が来るから、曲もこのあたりにピークを、とか」

飯野  「そうでしたね。確かにプレイヤーのタイミングによるんですが、普通のスピードで読んだ時の盛り上がりについて、意識して曲を書いてもらったのは良かったと思います。そういったことを想定しないで曲全体がフラットになってしまうよりも、ずっといいですよね」

坂本  「ええ、場所は選ぶとは思うんですけどね」

飯野  「この場面ではスクリプトだけでなく、テキストや絵がじわりじわりと盛り上げていたものを音楽が最後にまとめてくれたと思います。テキストなどが潜在的に持っているけれど、プレイヤーが見過ごしてしまうような部分を、音楽があることによって押し出したというイメージがありました」

坂本  「いやあ・・・ありがとうございます(照)」

飯野  「画面上に見えているものは変わらないんですが、音楽がいい形で包み込んでくれた。この曲はそういう曲だったと思います」

イシイ  「この曲に併せて飯野さんが話してると、ものすごくいいこと言ってるように聞こえるね(笑)」

一同  (爆笑)

■ 『包容』 (再生箇所 : 亜智編 14:45 「噛み合わない会話」 開始後1曲目)

坂本  「アコースティックギター一本でのシンプルな曲です。この曲を聴いていると収録の時を思い出しますね」

中嶋  「思い出しますなあ」

坂本  「まさかあんなに夜遅くなるとは。気づいたら9時間もピアノを弾き続けていました。こだわりすぎてしまって(笑)」

イシイ  「『真心』について先ほど古田が話していましたが、サウンドノベルというのは、映像に音楽をバッチリ合わせるというよりも、好きな本を、好きなBGMをかけながら読んでいるという感覚に近いと思うんですね。いくつか感動的なセリフがちりばめられているシーンで、プレイするごとに感動するセリフが違ったりするんですね。だから飽きないんです。そういうところはサウンドノベルのデメリットであると同時にメリットであるとも思います。自分のペースで感動できる。クリエイターとしては歯がゆいんですが、僕のペースで感動させたいというメッセージと、プレイヤーのペースで感動するところにズレがあって、このズレがまた、ゲームならではの面白さかな?と思います。そういう事を感じましたね」

坂本  「まさにゲームならではの良い意味での予定不調和ということですね!」

■ 『上々』 (再生箇所 : 御法川編 11:50 「取材開始」 開始後1曲目)

坂本  「続いてゲーム中、特に印象的にお使い頂いている曲をいくつかご紹介してまいります。この『上々』はリズムとワウワウなエレキギターの曲です。これもゲーム中たくさん掛けて頂きましたね」

古田  「この曲は特に御法川編でよく使いましたね」

坂本  「ええ。その辺り、差別化されているのかな?と思いました」

古田  「当初、試行錯誤していたときはキャラクターの分け隔てなく、いい曲なので色々な場面で使っていたのですが、周りのスタッフから、『もう少しキャラクター毎に棲み分けをしたら?』という意見が出まして、僕も反省しながら音楽を付け直したところ、この曲が御法川の芝居の掛け合いととてもよくマッチすることを発見しました」

■ 『茄子』 (再生箇所 : タマ編 11:20 「柳下がやってきて」 開始後1曲目)

坂本  「続きましてこの曲。これは柳下の登場とワンセットなイメージの曲ですね。この曲は我ながら気に入っている曲なのでございます」

古田  「発注した時に、使いどころをまとめてご案内したと思うんですが、想定どおりの曲が上がってきたので、想定どおりの場所に併せてみたところ全然問題なかった、という曲でしたね」

坂本  「嬉しいですー。とても作りやすいご発注を頂いて感謝してます」

中嶋 「バーニング・ハンマーの即売会場で掛けたのもおもしろかったよね」

一同  (笑)

坂本  「バーニング・ハンマー、ちょっと怖い気もしますが飲んでみたくなりますよね(笑)。どんな味がするのか・・・。アレはなにか元ネタがあるのですか?」

イシイ  「どうなんだろう?脚本から出てきてるから、あるのかもしれませんね。北島さん、ああいうインチキなもの詳しいからね(笑)」

一同  (笑)

■ 『事態』 (再生箇所 : 大沢編 14:00 「田中に盗聴器が……」 開始後1曲目)

坂本  「通称『エッシャ!ウィッシ!』です」

イシイ  「この曲、初めて聞いたとき何が起こったか分からなかった(笑)」

坂本  「僕もちょっとやりすぎちゃったかな?と思ってたんですけど(笑)」

飯野  「いやいや。この曲は大沢編で使っているんですが、ドヨーンとした空気が長く続く感じだったので、何か急激に事態が変わるところがあそこの部分とラストしかなくて、この曲を上げていただいたときにこのくらい発想としてブン投げていただいたものの方が、こちらとしても使いやすいというか、僕としては『ヤッター!』という感じでした」

坂本  「この曲についてはミーティングルームで中嶋さんと飯野さんと僕の3人でかなり悩みましたよね。その時に中嶋さんが後ろでボソッと『ケチャ・・・』と。それでピーンときました」

イシイ  「僕としてはかなり予想外の曲だったんですね。僕は開発中にあまりにも予想外なことが起きると、バグだと思うんですが、これも最初バグかな?と思った(笑)」

一同  (笑)

イシイ  「BGMじゃなくてセリフのSEが入ってるよ!って思って(笑)」

飯野  「声の部分と曲の部分に少し間がありますしね(笑)」

イシイ  「そうそう。でも僕が想定していた『428』の、いい意味で斜め上をいってくれてる演出のひとつですね」

坂本  「嬉しいです~」

■ ボーナスシナリオ1(白の栞)(以下、白の栞)オープニング、絶望

坂本  「あまりお時間もないので、白の栞の音楽に話を移したいんですが」

飯野  「あれ?!僕の中では坂本さんと音楽を作っていった中で、集大成と思っているのが、『絶望』と白の栞なんですが・・・『絶望』飛ばしますか?」

古田  「『矜持』と『絶望』についてはぜひお話したいですね」

飯野  「僕もどちらの曲も坂本さんのお話を伺いたいです」

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