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第四章 『矜持』『絶望』、そして『白の栞』へ。

※今回の話題にはネタバレを含んでおります。ゲームをクリアしてからお読み下さい。

古田  「『矜持』と『絶望』についてはぜひお話したいですね」

飯野  「僕もどちらの曲も坂本さんのお話を伺いたいです」

坂本  「えー!!ごめんなさい!!!『絶望』についてもぜひに!(笑)」

■ 『絶望』  (再生箇所 : 建野編 19:10 「挑発」 開始後1曲目)

坂本  「この曲はレコーディング1分で終わりましたね。ピアノをチャーン、と弾いて、はい終了(笑)」

一同  (笑)

飯野  「これは生で録音しなくていいんじゃないか?と話していたんですが、やはり録音して正解でしたね」

坂本  「2100万円のピアノを使った甲斐がありましたか?」

中嶋  「全然、絶望感が増しましたよ(笑)」

一同  (笑)

飯野  「この『絶望』にしても『矜持』にしても中嶋さんにイメージだけを伝えたので、中嶋さんから坂本さんに具体的な言葉で伝えていただいたと思うんですけど」

坂本  「この曲は一番難しかったです。いわゆる『絶望』というと、ピアノをガーンと腕全体で弾くとか、そういったものがあるとは思うんですが、それだと、もはやバッドエンドの代名詞になっている曲『転落』(再生箇所 : 亜智編 14:45 「噛み合わない会話」 開始後、『包容』、『茄子』に続き3曲目)のようになっちゃいますよね(笑)。最後のせっかく盛り上がった凄く良いシーンで『あれ?バッドエンドなのか?』と思われかねませんし(笑)」

中嶋  「『ボンベイっていうんです』のシーンでやると絶対そうなりますよ(笑)」

坂本  「衝撃すぎる事実ですね!それは!」

一同  (爆笑)

坂本  「とても悩んだんですが、あえてメジャーキーを使ってみました。聞こえは明るいけど、もうだめかも、みたいな雰囲気を出せれば、と」

飯野  「これを聞かせていただいたときに、驚いた、というかすごくザワザワとしたんですね。実際に当てはめてみたときに、先ほども話しましたが、ボタンを押すとピアノのこれが鳴るのがすごく気持ちよかったんです。とてもシンプルなんですが、飽きないですね」

中嶋  「改めて指示書の内容を見ても、私の方からは、音楽的な指示は特に何も書いてないですね(笑)」

坂本  「いえいえ。アルファルドの計画じゃないですが、その辺りの偶然性や曖昧性も含めたご指示を頂けて、僕としてはとてもやりやすかったです」

■ 『矜持』 
(再生箇所 : 建野編 19:20 「震える拳銃」 開始後1曲目)

飯野  「これも『絶望』と同じで、中嶋さんが作曲家の坂本さんにイメージを的確な言葉に置き換えて伝えてくださって良かったです。この曲を作られたときはまだコンテの状態でしたっけ?」

坂本  「そうですね。オーケストラの入った『ヘビー版』とピアノだけの『ライト版』もうまく使い分けていただいて」

飯野  「後で『ヘビー版』も作ってください、っていうのを無理やりお願いしたんですが、ダメ元で熱く語っていたときに、だんだんやってくださる雰囲気になってきて、これは押せばやってくれるんじゃないか?と」

坂本  「押されなくてもやりますよ~(笑)。少しでも作品が良くなるのであればなんでもやります」

一同  (笑)

飯野  「(笑)あのあたりから音楽を発注するワクワク感が増していきました」

坂本  「僕はいつもゲームの音楽しか作っていませんが、なんでゲームの音楽を作るときにゲームでしか出来ないことを試してみないんだろ?とよく自問自答するわけです」

中嶋  「私も同感です」

坂本  「僕やノイジークロークで作る作品はゲームだからこそ出来ることや、逆にゲームでないと実現できないサウンド作りというのを常に心がけているんです。シーンに合いそうな曲を作る、ということはもちろん大前提としてありますが、さらにユーザーとのインタラクティブな関係というものを生かしたサウンド作りをしないと勿体ない、という気持ちが強いですね。そういった意味では、先ほども仰っていた読む時のスピード感があるのであれば、もちろんそれに合わせて楽曲を作ることがゲーム音楽の存在意義だったりすると思うので、ここでこうしたいですとか、そういったことは演出の方々からどんどん言って頂きたいんですね」

飯野  「『矜持』の『ヘビー版』を初めて聞いた時は、朝、会社来てすぐだったんですけど」

坂本  「朝一から『矜持』ですか?その日一日のテンションが下がりませんか?(笑)」

飯野  「いえいえ!(笑)とてもしっくり来たので、一人でテンションが上がって、古田さんに『聞けー!!』と(笑)頭を混乱させました」

一同  (爆笑)

飯野  「そのぐらい、『ヤッター!』と思えた曲でした」

坂本  「僕も後半プレイしながら、自分が作らせていただいた曲ですが、うまく使っていただけて、自然に耳に入って没頭していました」

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『白の栞』の音楽について

■ 『白の栞』オープニング

坂本  「続きまして白の栞のオープニング曲『春の風(Piano Solo)』です。中嶋さんから、この曲のメロディを“拓也のテーマ”にして、タイトル動画曲『鳴らない鈴』の後半部分のメロディを“鈴音のテーマ”にしようというご提案を頂きました。各々のメロディをもとにそれぞれのアレンジ曲を何曲か作りまして、拓也が主観のシーンでは“拓也のテーマ”、鈴音が主観のシーンでは“鈴音のテーマ”、というようにメインモチーフを変えているんですね。また、白の栞のスタッフロール曲『春の風、鳴らない鈴』に鈴音のテーマメロディを取り入れてはどうか?というご提案も中嶋さんから頂きました。僕の方で試行錯誤していましたところ、全く意識していなかったのですが『春の風(Piano Solo)』と『鳴らない鈴』の調性が共にGで同じだということに気が付いて、二つの曲を同時に鳴らしたらどうなるのだろう?と。それがスタッフロールになりました。一回しか聞くことができないので、気づかれる方はほとんどいらっしゃらないかもしれませんが」

中嶋  「いやいや。気づく人は気づくと思いますよ」

飯野  「最後の曲はどうしよう?という話をしていたときに坂本さんからメールを頂きましたよね」

坂本  「そうでした。最後、身も心も一緒になった二人ですから、それぞれのテーマメロディも一緒にしてみたら、なんと・・・」

飯野  「はまるじゃあ~りませんか、と(笑)」

一同  (笑)

坂本  「自分でもびっくりしましたね(笑)」

【注釈】白の栞の楽曲では『春の風(Piano Solo)』・『春の風』・『手紙』に代表される“拓也のテーマ”と、『鳴らない鈴』の後半部・『秘密』・『淡恋』に代表される“鈴音のテーマ”で構成されている。白の栞スタッフロール曲『春の風、鳴らない鈴』では中盤からこの二つのメロディが同時に流れ、身も心も一つになれた二人の切なくも温かく幸せな気持ちを表現した。

■ 『拓也のテーマメロディ』

■ 『鈴音のテーマメロディ』

イシイ  「これは伝えないとダメですよね。知らない人にも知って欲しい」

飯野  「そうですね。多分感動が違うと思います。スタジオでは最後にミックスを聞いたときに『ええ曲や~』って、もうただのお客さんになってましたよ。その前の『矜持』の録音では色々とオーダーをしましたけど」

坂本  「え?お客さんだなんてとんでもない!この曲の時もオーダーをたくさん頂いて、ものすごく熱くこだわりを語ってましたよね?(笑)」

中嶋  「飯野さん、語ってましたよ(笑)」

一同  (爆笑)

飯野  「いやいやいやいや!!あれぇ・・・そうだったかな・・・」

イシイ  「都合の悪いことは忘れちゃうんでしょ?(笑)」

古田  「思い出はいつも美しいんですよ・・・(遠い目)」

イシイ  「白の栞はすごく面白い産まれ方をしている作品だと思っていまして、色々な事情があって結果的に総力戦になったんですね。『428』は当初から音楽に力を入れようという意識があったんです。前作の『忌火起草』ではもちろん音楽に力を入れているのですが、セリフが入って、ホラーなのですごくSEにも力を入れて、サウンドのトータル力を使ったところがあったのですが、今回の『428』ではセリフを一度捨てました。バラエティがあって、スリリングな物語の展開を支える役目をどこに託そうかという話になったときに、音楽に託そう、というコンセプトがあったんですね。ですから、最初から音楽に力を入れますよと宣言していたんですが、ただ、実際にそれがどう成立していくかというのは作っていかないと分からない部分があったんですよ。音楽がどれだけ力をもてるのか?といった部分で。ただ、それが先ほど『真心』、『包容』なんかを聞いたときに、『あ、音楽に任せたらこれだけのものが返ってくるんだ』、と。その気持ちが分かった上で、じゃあ、白の栞の音楽をどうしようとなった時に『音楽を本当に信じてみよう』、と。だから、飯野さんにも『音楽に任せて好き勝手やって、音楽に助けてもらって。音楽で徹底的に勝負しよう』と伝えました」

飯野  「白の栞のスクリプトは割りと早い段階で組み立ててあったので、音楽を乗せるだけですんなりいくだろうと思っていたのですが、最後にもう一度イシイ監督に『音楽を信じて欲しい』という話をされたんですね。演出をやっていると、どうしても照れてしまって、押せないというような部分もイシイ監督が『ここは押していいんだよ』、と」

イシイ  「そうそう。飯野さん、プロとしてのプライドは捨てて、中学生の初恋みたいな気持ちでやってよ(笑)、と。好きな娘を撮りたいから映画を撮りました。だから好きな娘を盛り上げるために最高の音楽を乗せちゃいました、みたいなことをやってよ!と(笑)」

一同  (爆笑)

飯野  「テキストを信じてやっていけば、じわりと来るんだろうなと思っていたのですが、どんな音楽をどんなタイミングでかけるかという試行錯誤の中で、この部分は照れないで押そう、と。先ほどの『絶望』や『矜持』などでの中嶋さん、坂本さんとのやり取りの中で、こちらがこうしたいという事を伝えれば、それに成立する音楽を返していただけるという実感がありました。中嶋さんが『恐らく坂本さんはこういった意図で作られたんだ』という事まで私に伝えて下さって、それがなければ坂本さんの意図をつかみ損ねてしまっただろうとも思います」

中嶋  「でも、飯野さんが一番初めに『春の風』を聞いたときって、いけるだろうとは思うけどバッチリだ!という感触までは持ってなかったですよね」

飯野  「そうです。とても素敵な曲だとは思ったのですが、自分が想定してたものとはズレがあったんです。それを中嶋さんに伝えたところ、中嶋さんは『これはとても力のある曲です。クオリティも高いが潜在的に深い可能性を持っている』とおっしゃって。中嶋さんの意見を聞いた後、もう一度曲を聴きなおしてみると、自分の中での印象がやはり変わるんですよね。坂本さんの意図も含めて中嶋さんの意見を聞いたときにしっくりきたんです」

坂本  「このテーマを書いたときに、ひとつの聴きなじんだ旋律が物語の進行に合わせて、徐々にゴージャスなアレンジになっていく、という構想がありまして、どうにでも転べるようなメロディを心がけていましたね」

飯野  「本当にそうなったと思います。シンプルな力強さには感服しながら使わせていただきましたね」

坂本  「そう言って頂けてほんとに良かったです。僕としても白の栞はとても思い出深いです」

イシイ  「白の栞は特に、音楽が良い、というものを作りたかったんです。でもそれは裏を返せば、音楽が目立ちすぎているという事であって、必ずしも良い事とは言い切れないじゃないですか?ただ、本編も含めてですが、白の栞は『音楽が良いよね』と言われても良いな、と。それはバランスを崩しているという事ではなくて、勝負どころだから目立ってもいいんですよ。サウンドノベルって、音楽が目立っても良いんじゃないの?という気持ちがありました。ですから、音楽についてプレイヤーの方々にどういった評価が頂けるのか楽しみですね」

坂本  「『サウンドノベル』というジャンルのネーミングにも『サウンド』という言葉が含まれているという意味では、最初からハードル高めといいますか、こだわりぬいた音楽を作ろうという意識は高くもっておりましたね」

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音楽の使いどころについて

坂本  「佐藤直紀さんの楽曲もとても素敵なものばかりですよね。この曲(泣きの曲)なんか特に好きです」

中嶋  「クライマックスの泣かせどころなんかは、各編で取り合いですよね?(笑)」

イシイ  「(笑)佐藤さんの曲に限らず、みんな取り合うから被るんですよ。他の人が演出しているシナリオはみんな忙しくて途中まで見ないから、状況が取り合いなのを分かっている僕は一人で『この曲、こっちでも使ってあっちでも使ってるよ!』、と(笑)。最後の方になって少し余裕が出てきてみんながお互いの状況を見合って調整するようになったんですけど、途中までヒヤヒヤでした(笑)」

一同  (笑)

飯野  「確かに監督が通しプレイをしてチェックしたときに『同じ曲がかかり続けるよー』とおっしゃっていたんです(笑)。古田さんはそれを聞いて『そんなわけないだろう?』なんて言っていたんですが、自分がプレイした瞬間に一言『・・・調整』と(笑)」

一同  (爆笑)

イシイ  「古田さんが物語の最初のほうのバッドエンドでかけていた曲が、飯野さんのクライマックスの方でかかっていたり(笑)。もう、バッドエンドのイメージしか湧かないよ!なんてこともありました。途中まではみんな忙しいので、仕方ないことですね(笑)」

飯野  「最終的な調整で陣頭指揮を取られた古田さんはどうでしたか?」

古田  「最初、みんなに『被りすぎだ』と言われたので、一番反省したのは僕だったと思います」

飯野  「あれ、さっきまで自分を良く言おうとしてたじゃない?(笑)」

古田  「そうですね。思い出は美しいので(笑)」

一同  (爆笑)

中嶋  「曲をもっとシナリオごとに分けようという話になった後も、やっぱりこの曲はこっちのシナリオでも使いたいという事がありましたよね?」

古田  「ありましたね」

中嶋  「自分で決めておいてねぇ・・・」

一同  (爆笑)

飯野  「何度か中嶋さんに『この曲はここで使っていいんでしたっけ?』とお伺いを立てにいきました(笑)」

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エピローグ

川越  「えー・・・お話も尽きないところではございますが、そろそろお時間となってまいりました。本日は皆様、お忙しいところ貴重なお時間を頂きまして本当にありがとうございました」

坂本  「その格好で御礼を言っても説得力に欠けるけどね」

川越  「やっぱりだめでしたか?」

一同  (笑)

坂本  「っていうか皆さんとの話が面白くて、川越くんがコスプレしてたこと忘れてたよ」

川越  「問題ございません。私としては自分の仕事をしっかりこなしたな、という充実感で満たされています」

坂本  「川越くんも良い曲書くけどさ。本当はこういうことがやりたかったの?」

川越  「ええ、自分にウソは付けないもので」

坂本  「それなら良かった。今日は本当に、紅一点でよく頑張ってくれたね」

飯野  「紅一点?(笑)」

古田  「まあでも、私たちから見えていたのは上半身だけなんで」

中嶋  「上半身だけでも、十分アカンやん(笑)」

一同  (爆笑)

坂本  「では今度は真面目に・・・本日は本当にありがとうございました!」

一同  「ありがとうございました!」

「428 〜封鎖された渋谷で〜」オリジナルサウンドトラック

タイトル:「428 〜封鎖された渋谷で〜」オリジナルサウンドトラック 音楽:佐藤直紀、坂本英城、保本真吾
発売日:2009年2月4日
品番:LACA-9141〜42
価格:3,300円(税抜 3,143円)
発売元:株式会社ランティス
販売元:キングレコード株式会社

『428 〜封鎖された渋谷で〜』オリジナルサウンドトラックが2009年2月4日に発売予定です!
音楽だけを聴いてもとても楽しめる内容になっておりますが、
ゲームをプレイされてから聴いて頂くと興奮や感動が倍増すること間違いなし!
是非ゲームをやりこんで頂いて、準備万端な状態でお楽しみください。


(C)2008 CHUNSOFT

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