川越 「私もプレイさせていた頂いたのですが、とてもスピーディーに物語が進んでいくのに驚きました」
坂本 「僕もそれは最後までクリアして、すごく感じました。背中を押される感じで、どんどん先に進めたくなりました。朝早起きしてまでプレイしていましたから・・・。早く次の展開が知りたい!の連続でしたね。そういったスピード感を出す工夫というのはどういったものだったのですか?」
イシイ 「物語の最初の段階から『スピード感を出そう』という大きなコンセプトがあったので、それが自然と出ている、というのが一番だと思います。演出のメンバーも撮影のメンバーも『スピード感を出す』という事を前提に作っていったので、結果的に出ているという事だと思います。コンセプトとしてかなりこだわった部分です」
坂本 「僕も改めて、サウンドノベルというジャンルの大きな可能性を感じました」
イシイ 「サウンドノベルというのは今まで、あまりスピード感を重視してはいなかったんですね。『かまいたちの夜』等も、傑作ですが、殺人事件が始まるまでは日常の説明が続いて立ち上がるのが遅い、と。ゲームというのは買ったからやるもので、映画みたいな形で、お金を払ったからアタマの部分は見てもらえるというのはあるんですけど、最近のテレビドラマや映画なんかは最初からスピード感があって、とてもサービス精神旺盛なものが多くなってきているじゃないですか?ですので、そういうものに対して負けられないという気持ちで、始めたらやめられなくなるようなスピード感のあるストーリー展開、演出をやっていこうと、がんばりました」
坂本 「出来上がったものをプレイさせて頂いてみると、とても中毒性があると思います。これは古田さん、飯野さんに伺いたいのですが、演出のコツというものがあればお聞かせ頂けますか?」
古田 「ゲームが始まってすぐに『掴みの部分を押さえたい』という思いがありましたので、最初からスピード感を出すためにカット数も重ねていますし、それに併せて、音楽やSEの発注にもかなり気を使いました。後は編集の細かい積み重ねですね。一度でバシっと決まるわけでは決してなくて、修正をして『前よりスピード感が出た気がする』といった試行錯誤の積み重ねで、なんとかここまでこれたかな、と」
坂本 「なるほど。文字の表示速度や大きさなどにもかなり気を使われているようにお見受けしたのですが」
古田 「はい。実際にWiiリモコンを握って、気持ちいいタイミングで押して、文字が出る、また、押して、文字が出る。そういう繰り返しに中毒性が生まれるようなタイミングを心がけました」
坂本 「なるほど。その辺りは飯野さんとも意思の疎通を図られたのですか?」
古田 「いいえ。言わなくても通じ合える間柄でしたので(笑)」
一同 (笑)
飯野 「僕は今まで映像の分野をメインにしてきている人間なので、そもそもサウンドノベルというのはどういう風に楽しむかというのがわからなかったんですね。『忌火起草』に携わったときにイシイ監督から『サウンドノベルというのはボタンを押すのが楽しいゲームでなければいけないんだ』と言われまして、良く考えてみると「押すと文字が出る」というテンポ感というのは何よりも必要だ、ということに気付きました。ですので今回の作品で演出を組んでいく時も、ユーザーのアクションに対してリアクションが起きる時の気持ちよさはかなり気にしていました。必ずしも全てが速いテンポで進むわけではありませんが、ユーザーがゲームを進めていく中での感情曲線にうまく入り込んでいけたら、制作者的としてはありがたいな、と思います」
坂本 「それは映画にはないところですね」
イシイ 「『428』について、映像などに関する質問が多いので、なかなかこうした部分をお話しする機会がなかったのですが『良く出来たサウンドノベルというのはリズムゲーム、音ゲーである』と、僕は常々言ってきているんですね。良い演出がされている作品はボタンを押していて気持ちがいいんですね。特にアクションシーンなんかで演出がハマっているととても気持ちが良くて。タメがあって、ボタンを押すとバーンと何かがはじける、というような。その上で映画的なアプローチ等があるわけで、このベースの部分が出来ていないと、『根本的に違うよね?』ということになってしまうんですよね」
坂本 「そうしたお考えがテンポの良さにつながってるんですね。『KEEP OUT』が入るタイミングも絶妙ですよね」
イシイ 「『KEEP OUT』のタイミングはシナリオがあがった段階で大体は決まっていたんですね。ただ様々な事情で、ここから先はバラせない、と。こちらのストーリーを先にプレイして欲しいから、ここで『KEEP OUT』する、といった部分をシナリオライターが頑張ってつけて、それを演出側に投げて。演出側としては、『ここでKEEP OUTを入れるならここまで引っ張って頑張るか』といった形でキャッチボールが重ねられて出来ていったと思います」
飯野 「イシイ監督、随分美しい言い方でしたけど、『ここでKEEP OUTしないでくれー!ここで加納を止めておいてくれよ!』とか、古田さんと結構やり合ってましたよね。あれ、こういう話はしちゃいけないのかな?(笑)」
一同 (爆笑)
イシイ 「やってたやってた!それ覚えてる!クリエイター同士のせめぎ合いがありましたね(笑)」
坂本 「総撮影枚数12万枚の写真撮影をされたという事で、撮影時はさぞ大変だったのではないでしょうか?」
古田 「ええ。現場監督の毛利さんは毎日、針灸を打ちながら撮影されてましたね」
イシイ 「飯野さんはどうか分かりませんが、僕はもう、渋谷に行くのがイヤになってしまっていました(笑)」
飯野 「僕もですよ(笑)」
坂本 「ここにいらっしゃるのは、今、一番渋谷という街を知っている方々かもしれないですね。隅から隅まで(笑)」
イシイ 「撮影が終わってから半月後くらいに渋谷で打ち上げがあったんですが、道玄坂を登る足が重くて、重くて(笑)」
飯野 「撮影用にカメラも新しいものを買ったんですが・・・」
イシイ 「買ったばっかりでロケハンからスタートしたんですけれども、終わった後に8万シャッター押していたんですね」
坂本 「8万シャッター・・・ですか?ちょっとピンときませんが・・・」
イシイ 「ええ。ちょっと動きがおかしくなったので、メーカーに見てもらったら?ということで調べたら、通常10万シャッターでオーバーホールなんですって。だから使い始めて2ヶ月でほとんどオーバーホールまで」
一同 「ええーーー!!(驚)」
イシイ 「シャッター交換の寿命は30万シャッターらしいんですよ。シャッターの寿命なんて、普通、来ないじゃないですか?」
坂本 「僕もカメラ好きですが、シャッターに寿命があることすら考えたこともないです(笑)」
一同 (笑)
坂本 「当然全ての面でこだわられたとは思うのですが、特に『ここはこだわった!』という部分はありますか?」
川越 「(突然立ち上がり)やっぱりスカートだと思います。私、これユザワヤで生地を買ってきて自分で作ったんですよ」
(静まりかえる一同)
坂本 「・・・っていうか、おまえ、なにいきなり話し始めちゃってんの?」
川越 「私の服装の話ではなかったんですか?」
坂本 「どうしてそう思ったんだよ。会話の流れからわかるだろ・・・あれ?スカートのファスナー緩んでるぞ。直さないと・・・」
川越 「あぁぁーーーーっ!」
(せっかく話が盛り上がっていたところで、川越のスカートがずりおちパンツ一枚。台無しに)