English version is here."Original Sound Version (www.originalsoundversion.com)"
参加メンバーの体内にアルコールが回り始め、程よい加減になった頃合いの午後8時。
ここ、株式会社ノイジークロークの会議室は、新鮮な寿司のネタが一気に劣化するほど異様な熱気に満ちあふれていた。
いよいよ記念すべき第1回ゲームミュージックコンポーザー座談会が幕を開ける…!
(以下、敬称略)
坂本:ひっく…えー、そろそろ始めますか皆さん!なんだか目が据わって来ている人もいますけれども。
佐野:そうですね、早く始めないと寝ちゃう人が…。
一同:やばいやばい!(笑)
坂本:じゃあ……第1回!ゲームミュージックコンポーザー座談会開幕――!
一同:わーわーわー!パチパチパチ!
坂本:…と言っても、何をテーマに話すのか?ってみなさん疑問だと思うんですけど。うちのサイトで一般の方々から質問を募集しまして、その中でも多かったものや、うちの社内から出た質問を皆さんに答えて頂きたいと、そういったシステムになっております。
一同:ほうほう
坂本:で、もっとも素晴らしい発言をした方にはMVC( Most Valuable Composer)の称号と共に、立派なトロフィーが贈られます。
一同:(トロフィーを見て)ち…ちいさっ!
坂本:すみません…予算が無くて、東急ハンズで900円で昨日買いました。あとは皆さんの目を少しでも癒してもらおうと、 金髪のバドガールをご用意しております。
湯川:(バドガールの衣装を身にまとい女装をして、ドアを開けて入ってきて)ドウモ、キョウハ、ニポーンノミナサン、ヨロシクオネガイシマス。
一同:……(絶句)
佐野:これ…ひどいですね…。
甲田:あははは…凄く面白くないですか? この空気。
坂本:笑ってるのは…甲田さんだけじゃないですか…。うちのディレクターの湯川です。彼の衣装が今回もっとも予算の掛かっている部分ですから、大事に扱ってあげてください。飲み物のおかわりは彼が運びますので遠慮無く注文してくださいね。
一同:(苦笑)
坂本:じゃ…まず最初の、一番多かった質問からはじめましょう。
佐野:デーデッ!
坂本:これ、ちょっと幅広い質問なんですけども……。
佐野:いきなりもう、なんかねぇ……。
一同:重いなぁ!(笑)
坂本:何かあります? 「無になって作る」とか、逆に「曲をいっぱい聞く」とか、作るときに自分のトリガーとなる行動……縁起とかでもいいですよ。例えば「今日はちょっとオレンジの靴下にしてみるか……」とか。
佐野:オレンジの靴下って(笑)
中村:作るときにやっていることでもいいんですか?
坂本:なんでもいいです。今日はどんどん暴いていきますよ!皆さんの恥ずかしいプライベートを!
中村:「自分で締め切りを決めない!」
坂本:なるほど~。そこはちょっと意見が分かれるんじゃないですかね?
中村:つまり時間の余裕を持って作曲することですかね。「曲を作んなきゃいけないな」というときに、「何時までに作らなきゃな」っていうのは嫌ですね。
佐野:えーーー!
坂本:あえて「明日締め切りです」という状況にしてしまって、尻に火を点けてから作曲する方もいますよね。僕なんかはそうなんですけど。
佐野:締め切りがあっても、あえてみたいな……、てことですよね。
坂本:そうですね。ギリギリまでやらないっていう。
佐野:じゃあ、ちょっと(中村さんと坂本さんで)モメてもらえます?
一同:(笑)
坂本:あははー!ちなみに中村さんは中学高校の頃、中間テストの勉強はどうでした?
中村:試験勉強はちゃんとやりましたよ。「明日数学だから、勉強しとこう」みたいな。
坂本:僕といとうはそこが違うんですよ~!
いとう:ちょちょっ…僕を巻き込まないでくださいよ…。でも僕も、中村さんの言われる通りでありたいと思うんですけど、どうしても(坂本を指差して)こうなっちゃうんですよ。
坂本:甲田さんはオーケストレーション書くときとか、ものすごく時間がかかるんじゃないですか?
甲田:どちらかというと、僕も坂本さんタイプですかね。書き始めちゃうと自由度がどんどん減っていく感覚が嫌なんですよ。
佐野:はいはいはい。
いとう:曲の自由度ってことですか?
光吉:(曲が)形になってくると、ってことじゃないですか?
甲田:それまでの全部の可能性がある状態が好きなんですよね。
中村:でも、ずっとその状態だと曲が完成しないよね(笑)。
佐野:実は考えてない、ということはありません?
坂本:それ仕事してないじゃないですか(笑)。
いとう:その状態が好きだから、そのままズルズルと締め切りまで引っ張っちゃうんですよね。
坂本:そうそうそう、俺そんな感じ。光田さんはどういうタイプですか?
光田:僕は締め切りがないと絶対ダメなタイプですね。いつまででも書いちゃいますもん。
いとう:1曲をいつまででも、ですか?
光田:許されるんだったら、いつまででも(笑)。佐野さんと同じで…。
佐野:あー、でも僕、そうすると自分の曲に飽きちゃうんですよ!
一同:(笑)
佐野:だから、逆にいつまでもできないんです。「何回聞いたんだよ、この曲!」みたいな。当たり前ですよね、自分で作ってるんだもん(笑)。
坂本:それはありますね~。庄司さんはどうですか?
庄司:俺も尻に火を付けるタイプです。宿題もあとでまとめてやるタイプでしたし。
坂本:やっぱりこれって子供の頃からの生活習慣が大きく作用してるんですかね?
庄司:ですかね。実際にゲームにSEが乗るまで待つ時もありますけど、作れるときは一気に作っちゃいますかね。でも早くできちゃうと、俺もやっぱり光田さんみたいに許される限りいじりたいですね。意味もなくベースを変えてみたり。
坂本:佐野さんは?
佐野:え? 意味もなくベースについて?
坂本:いえあの…そっちじゃなくて…。
一同:(笑)
佐野:今ね、庄司さんの「意味もなくベース」っていうキーワードを聞いて、「俺もあったなぁ」て思って(笑)。僕、この質問と全然違う話をしますけど…曲を作ってる時に、現実逃避って色々あるじゃないですか。例えば曲を書かなければいけないのに、どこか飲みに行っちゃうとかね。
坂本:ありますねぇ。
佐野:普段は(飲みに)誘わない人を誘っちゃうみたいな。それとは別に、曲を書いてる時の現実逃避ってありません? 要は、(曲の)尺を伸ばさないといけないのに、さっきの話だけどベースのフィルターを変えてみるとか。「それ全然ダメじゃん!時間軸、時間軸!!」て思ってると、余計に別のところを変えてみたり……。早く尺を伸ばせよっていう。(質問とは)まったく関係のない話でしたけどね(笑)。
坂本:なるほどですね~って…皆さん、質問をよく見てください!このままじゃ質問者のホワイトさんが超ガッカリしますよ!細江さんはどうですか?
細江:いやー、あんまり気にしたことないけど、僕は締め切りを作る側なんで。
坂本:自分に対しての締め切りを作るってことですね。
中村:作曲するうえで心がけていることが「締め切りを作る」(笑)。作曲するときって制作サイドに「この曲、いつくらいにできますか?」って聞かれますよね?
佐野:あれ、ホント愚問ですよね!
中村:愚問!
一同:(爆笑)
佐野:ここ大事なところなんでサイトに書いといてくださいよ!「いつまでにできますか?」なんて僕が聞きたいですよ!わかんないですよね!
中村:確かに答えようがないよね。
佐野:そうなんですよ。ベルトコンベアーの流れ作業のようにできるものじゃないじゃないですか。
坂本:1日でできるものもあれば、2週間経っても何もできないこともありますしね。
中村:そういう時、何て答えます?
佐野:…………ですよね~!
一同:あはは!!(爆笑)
佐野:もう、ちゃんと答えずに曖昧な返事で済ませる!これが一番!
光吉:会社の中でも、例えば上から「どれくらいでできるんだ」って言われても、開きがあり過ぎて、アベレージ出せないですよね。まあ、出さないといけないんですけど。
佐野:まあ、ちゃんと完成させますけどね。そこはプロですから!(笑)。でも、曲ができる前って精神的にすごく不安定じゃないですか。そこを分かってほしいですよね…ってまた、全然(質問と)話が違う…。
―:例えば、皆さん後輩の方がいらっしゃると思うんですけど、その方たちに「作曲するんだったら、こういうことを心がけなよ」とアドバイスすることって何ですか?
中村:めちゃくちゃ厳しいですよ。「1日1曲!」とか。ウチは曲を書くスタッフがいないんで。
庄司:課題としてですか?
中村:そう。課題として、1~2曲ぐらい。
佐野:逆にそう言われたほうがいいですね。
坂本:佐野さんは実行してるじゃないですか。
佐野:あれは一時期ですもん。すぐやめちゃいました。
坂本:光吉さんと「すごいよね」って言ってたんですよね。
光吉:そうそう。コンスタントに1日1曲ってできないですよ。
佐野:キーワードに惚れちゃったんですよ。「佐野信義の、1日1曲!」
光吉:すごく語呂が良い!(笑)
佐野:略して「佐野一(サノイチ)!」かな~とか、そっちばっかり盛り上がっちゃって(笑)。やってみたらツライツライ!
坂本:サノイチ!!略したらビックリするくらい、ダサくなりましたね(笑)。
佐野:でも、それくらいないと(1日1曲は)やれないですよ。
坂本:まぁまぁ、この質問はこんな感じですかね?
佐野:え…いいの?
一同:(笑)
坂本:大丈夫です! 今の話は有意義でしたよ。
佐野:いろんなコト言いましたけど、平たく言えば「締め切りを守ろう」ですよ(笑)。
中村:それ正解!
佐野:ということでホワイトさん、「作曲をするうえで心がけていること」は、「締め切りを守る」で!
坂本:じゃあ……第2問―!
佐野:テーテッ!
坂本:メロディを作るときって無意識に歌詞がのっちゃうものなのかなっていう。
―:一ユーザーとしてゲームから流れる音楽を聴いてるとき、勝手に適当な歌詞を作って歌っちゃうことってたまにあるんですよ。そういうことって、コンポーザーさんたちにもあるのかなぁって思って。坂本さんは「アイシテル」のフレーズで歌われるらしいんですけど(笑)。
坂本:5文字=5拍子ですからキツイですよ(笑)。ほかの皆さんはどうですかね?
佐野:歌モノだとありますよね。
坂本:例えばメロディを生み出すときってどうされてますか? フッと頭に沸いてそれを作曲する方と、鍵盤とかギターを弾いて実際音を出しながら音を探っていく方といると思うんですよ。僕はどちらかというと後者のタイプなんですけど。例えば出先で何も書くものとか録音するものがないときに、「うわー、すごいの思いついちゃった!」てなって、そのまま口ずさみながら家に帰ったりしませんか?
佐野:僕はどっちかというと口ずさむのって、メロディじゃなくてビート系なんですよね。
庄司:あー、俺もそうなんですよ。
佐野:そうですよね。だからメロディを口ずさむことはあまりないかなぁ。
坂本:それって突き詰めると、歌いながら帰ってまでしなければ覚えられないフレーズやビートだったら、実はそれは大して良くないんじゃないか…考えたりしません?
光吉:それ、あります!
坂本:今忘れて、家とか職場に帰ってもいつでも思い出せるもの、フッと出てくるものが本物だよ、と。良くないから忘れちゃうんだって自分に言い聞かせる。
佐野:俺は全部拾いたいくらいの人なんで。せっかくできたんだから。
一同:(笑)
佐野:坂本さん!思い出せないフレーズは大したことないって言いますけど、そんなことないですよ。全部拾ったほうがいいですよ!(笑)
坂本:メロディメーカーの光田さんはどうですか?
佐野:光田さんはメロディからなんですか?
光田:僕は最初に作曲する時、スリーコードしか使わないんですよ。
一同:えーーー!(驚)
坂本:あわわわっ、C、F、Gってことですか?
光田:もう、ぶっちゃけ言うとそのくらいで。それでメロディが乗っていってコードを変えて。
いとう:「クロノトリガー」のテーマ曲も、もとはスリーコードだったんですか?
光田:そうです。それをちょっとジャズ風にしたんですよ。でも全然ジャズにならなかったんですけどね(笑)。
佐野:メロディにテンションを追わせるみたいなムードですか?
光田:いや、とくにテンションをってわけではないんですけど。
光吉:でもテンションになってますよね。
光田:なっちゃうんですよね。
佐野:じゃあ、それはちょっとした「縛り」なんですね。
光田:昔、師匠に「ビートルズなどのいい曲は基本スリーコードだ!」って言われたことがあって、「じゃあスリーコードで良いかな?」って思って(笑)。
坂本:今でもそうしてるんですか?
光田:だいたいは……。どの曲もスリーコードでいけるんじゃないですかね。
佐野:「光田スリーコード」っていうCD出したらどうですか? 今までの曲のスリーコードバージョンを全部!
坂本:あー欲しい!
光田:そんなの、恥ずかしくって聴かせられませんよ(笑)。
光吉:でも、その作曲法は面白いですね。
坂本:つまりメロディを重視してる、ってことになるんですかね?
光田:普通の場合はそうですね。ジャズの場合は完全にコードだけ作りますけど。基本はやっぱりピアノでつくりますね。
坂本:そもそも皆さんは打ち込みのときのインターフェイスって何ですか? 光田さんは鍵盤ですよね。他にはシーケンサー上に直接ノートを書いていく方とか、色々方法があると思うんですけど。
細江:鍵盤ですねぇ。
坂本:僕も鍵盤です。
佐野:庄司さんは?
庄司:打ち込みは鍵盤ですね。
坂本:佐野さんも鍵盤ですもんね。
佐野:鍵盤ですけど……。ただ、「鍵盤を使わないとする!」と決めるときってありますよね。「今日はマウスだけ」みたいな。
坂本:それって…さっきの質問の答えじゃないですか!? 「作曲のときに心がける~」の。なぜここで!
佐野:あー、そこに戻っちゃいます?(笑)。でも縛りがあるといいですよね。光田さんの3コードのお話もそうですけど。
庄司:曲によって作り方も、心がけることも変わってきますよね。ロックを作るときにしても最初はやっぱりリズムから入ってもギターで作りますが、ピアノ曲を書かなきゃならないときとかは流石にギターは出しませんし(笑)。
坂本:甲田さんはどうやって作ってるんですか?
甲田:まずはピアノとかを立ち上げて、まあ何でも良いんですけど。それで楽器を変えながらガンガン弾いて作っていきますね。
坂本:それで最後はピアノを消す、みたいな?
甲田:そうですね。
坂本:作曲工程は限りなく僕と似てますねー。いとう君は結構ペンツールで書いたりするんでしょ?
いとう:僕はまず考えますね。考えてからマウスだけっていうのが多いです。
坂本:光吉さんはどうやって作ってるんですか? まずは歌?
佐野:もちろんですよ! 「デイトナ」から始めますよね!(笑)
坂本:「日本一歌のウマいサラリーマン!」
一同:(笑)
光吉:いやいやいや……(笑)。僕は曲によってメロディから作ったり、コードから作ったり変えます。コードから攻めるときはだいたい、ありえないメロディを歌うことになるんですけど(笑)。最近はこだわらなくなりましたね。
佐野:ということで、全部「デイトナ」で。歌詞は全部「デイトナ」、いろんな「デイトナ」があります!
一同:(笑)
佐野:こういうこと言うと、絶対怒られるんだよなぁ。ご本人は笑ってくれるんですけどね、ファンの人に怒られるんですよねぇ(笑)。でも、どんとこいですよ! 打倒デイトナで曲を書いた人もいるんですから。(細江さんのほうを見て)あっ、ここにいた!
光吉:え、逆ですよ。「リッジレーサー」のほうが先ですから。僕は「打倒リッジ」みたいな曲を作ったんですもん!
坂本:おおおっ!セガVSナムコ的なのってあるんですか?
佐野:あるんですか、どころじゃないですよ……。初めて「デイトナ」が出た時のゲームショウで「歌わしてるよセガ……」って。「そこまでして自分の歌を聞かせたいのか!?」って思いもあったんですけど(笑)、ナムコのサウンドチーム的にはちょっと悔しいんですよ。
中村:でも、その前リッジレーサーでBOSEのスピーカー使ってらっしゃいましたよね。
光吉:あれ、めちゃめちゃ「やられた!」と思いましたもん。当時はリッジに勝たなきゃって必死だったから。
坂本:では質問のまとめとしては……
佐野:口ずさんだり、しなかったりします! もしくは全部「デイトナ!」ってつけます!
一同:(笑)
坂本:じゃ…じゃあ、続いての質問に行きますか!
佐野:あ、できればこの仕事に就くのやめたほうがいいですよね? 皆さんもそう思ってません?
坂本:元も子もないことを…。
庄司:競合相手を増やしたくないって理由からじゃないですか?(笑)
光吉:やめたほうがいいっていう根拠ってどのへんにありますか?
佐野:いえいえウソです。なんか、スゴイ若手とか見たくない?(笑)
坂本:とすると…モチベーションを保って作曲する秘訣って何なんでしょう??
中村:自分で作った曲は良いものだと信じてやっていくしかないんじゃないですかね。
坂本:自分が今まで作られた曲とか聴き返したりします?
佐野:しますします。
坂本:僕もすごい聞き返すんですけど、いとうはまったくしないんですよ。
いとう:何かアラが見えてきて……。
佐野:あ、シラフで? シラフは絶対無理ですね。シラフで聴いてるときは、かなり病んでるときですよ。「あー、俺ダメかも…」っていうときに聴いちゃうんですよ(笑)。あまりにも書けないときに、前の曲を聴いて「あの頃は良かったなぁ…」って。「俺、今度この曲が書けないって言って、謝って終わりなんだ…」っていうときはシラフで聴いてますけど。って、全然、モチベーションを保つ秘訣ではないですね(笑)。
坂本:ですねーむしろモチベーションが下がってますから…(笑)。
庄司:そうならないためには、どうするかですよね。
佐野:どうしますか?
坂本:生み出していく原動力って何なんでしょう? 色々あるとは思うんですけど。
中村:結果を求めるんじゃなくて、過程が面白いと思えれば誰だってやれますよね。
佐野:でも、この方(質問を送ってくれた「街を去るペンギン」さん)は曲を作ってるんですよね。じゃあ、あんまりモチベーションが保てないから心配だと。
坂本:中村さんの仰っている作曲の行為自体がすごい楽しいっていうのは、大前提ですよね。
中村:そうですね。結果だけが楽しいっていうのは絶対ダメだと思います。
佐野:えー、でも過程って楽しいですか……?
一同:(笑)
坂本:おっおっ!あらたな話の展開!!
光吉:たぶんね、時期があると思うんですよ。楽しくない時期を経てくると、急にアドレナリンが出てくるじゃないですか。
佐野:それ1曲でもなりません?
坂本:あー、わかります!
いとう:コンポーザーズ・ハイ、みたいな。
佐野:そうそう、コンポーザーズ・ハイ的な(笑)。あれ何でしょう? 最初から最後まで絶好調でいきたいですよね。「俺、天才―!」みたいな、でもそれがないとリリースできませんよね。
中村:佐野さんのモチベーションは、つまりそれですね。
佐野:でも…秘訣ですか?
中村:それを自然に思うわけですよね、佐野さんは。
佐野:いや…秘訣ってあれじゃないですか? 「仕事にする」。仕事じゃなかったら、なかなか続かないですよ。何気に良いこと言ってません? あと、個人的に言うと、僕は必要以上に風呂に入りますね。
光吉:風呂…?(笑)それは何でですか?
佐野:風呂に入ると水平思考になるって言って、違う意識になるらしいんですよ。
光吉:確かに耳まで湯船につかった時の「バコッ」っていう音って良いですよね。
佐野:あれ大好きなんですよ!
光田:でも怖くないですか? 風呂にゆっくり入って、出てから自分の曲を聴くと「なんじゃこりゃ!?」ってなりません?
佐野:あんまりならないですね。何でかって言うと、風呂に入る時って「うわ、俺もうホントだめだ!」というときなわけですよ(笑)、それで風呂入って色々忘れて気持ちよくなって上がるじゃないですか。そのあとで自分の曲を聴くと「色々あるけど、イケるよ佐野ちゃん!」てなるんですよ(笑)。息詰まるとお風呂に入る方は他にもいますね。
坂本:じゃあ結論は「お風呂に入る」ということで…次の質問です!
中村:仕事中って、まさに仕事しているときにお酒を飲むってことですよね?
坂本:そういうことですよね。
佐野:細江さんは飲んでらっしゃるんですか?
細江:冬場は特に。
一同:(笑)
佐野:飲まないと温まらないような、寒い場所で仕事してるんですか!?(笑)。最近は何を飲んでらっしゃるんです?
細江:ラム酒が多いよね。ホットラムとか。
佐野:ホットラム良いですよね。
中村:何でラム酒にハマったんですか?
細江:温まるから(笑)
佐野:…海賊みたいですね。
一同:(爆笑)
坂本:寒い以外にも、インスピレーションが沸くとかの理由で飲まれるんですか?
細江:いや、酔っぱらうとろくでもない曲ができちゃうから(笑)。
坂本:じゃあ、まさに暖房ですね。
佐野:ほかの皆さんは仕事中に飲まれますか?
光吉:時々、仕事が行き詰まって、もうヤメ!って言う時に退勤した後に、席でグイッ!みたいな。
坂本:僕も飲んだりしますね。酒を飲めば凄い閃きが出てくるかも…と期待して。
佐野:それってでも、あれですか。ある意味「逃げ」っていうか…。
光吉:多いですね、そういうときが。
坂本:詰まったときに何か出てくるんじゃないか!? っていう期待はありますね。
いとう:確かに、酒を飲んで酔っ払ったときに、普段とは違う何かが出てくるような気がするんですよ。ただ、酔っぱらってるので、それをどうこう編集しようっていう体力のほうに影響がでるんです。だからどっちもどっち、ていう感じはしますね。
細江:そこで、さらに飲んで体力つければ…。
坂本:酒飲んで体力付けるって発想が凄いです!光田さんは飲まれます?
光田:僕は仕事中には飲んだことないですね。完全にダメになるタイプなんで。
佐野:光田さんは飲むとね、お話が面白くなっちゃうんで、曲を書く必要がなくなります(笑)。
坂本:甲田さんはお酒を飲まれて仕事するイメージが……。
甲田:全然飲まないですね。僕も光田さんと一緒で、飲むとつぶれちゃうんで。
坂本:そうなんですか! ではこの質問の答えは「細江さんはラム酒」でいいですか?
坂本:これはもう、スケジュール次第ですか?
細江:できてないときがあるもんね、ゲームが。
佐野:でも、すでに先に曲ができているっていうことはないですよね。
坂本:例えば何の仕事でもないときに作って気に入った曲が、ここで合うことかも、っていうことで使ったことってあります?
佐野:それたぶん、すごい二分されますよね。
坂本:僕は絶対にないんですけど。それぞれのゲームのイメージを掴んでから作るので、自分で気持ち悪いっていうか。
佐野:でも曲をストックされてる方っていますよね。
坂本:もしかしたらそっちのほうがいいんですかね。もったいないと言えば、もったいないですし……。
細江:伊藤賢治さんは貯金してそうだよね。
佐野:イトケンさんはしてそう…ってここにいない人の話で盛り上がるのはどうなんですか(笑)。でも僕もそんな気がするんですよ! 「貯金してそうなゲーム作曲家」第1位はイトケンさん!!2位は誰ですかね~?
庄司:中村さんは貯金してそうですけど。
中村:してないしてない。ゼロですね。
光吉:「アウトラン」の曲を作ったHIRO(川口博史)は作り貯めしているのを見た事あります。
坂本:じゃあ、この質問の答えとしては、どういうことになるんでしょうかね?
光吉:雰囲気に合うように作るってことでしょうか。
佐野:まあでもねぇ、たくさんの人が絡んでる仕事ですからね、ゲームっていうのは。例えば作曲している人と、ゲーム自体を作っている人っていう、そういう視点で見ると、ゲームを作ってるほうは「いやー、ゲームできてますよ」と言われているんですけど、作曲してるほうからすると「全然できてないじゃん」と。そういう相関関係が(隣に座っている光田さんを指して)まさに、いま、この距離で行われているわけですよ(笑)。
坂本:つ…辛いですねぇ(笑)。今日はお忙しいところありがとうございます!
佐野:ただ、せっかくだから影響受けて作ったほうが面白いですよね。
光吉:それはありますね。
佐野:「とりあえず作ってください」みたいな話もたまにありますけど、面白くないじゃないですか。やっぱりギリギリまででも(ゲーム画面は)見たいというか…。
光田:そのほうが良いですよね。
佐野:大なり小なり、影響受けて作らないと意味ないじゃないですか。
坂本:一緒に見て聴いて、自分が満足しないと嫌なので、ゲーム画面とか資料は先に頂きたいですよね。
佐野:せっかくひとつものを一緒に作るんですからね。
―:ゲーム画面を見て創作意欲が沸いた作品は過去にありましたか?
佐野:画面じゃなくて、紙資料を見たときじゃないですかね。「これ面白そう、書きたい」って。でもそういう作品って、自分のとこには来ないんですよね(笑)。
坂本:「モンスターハンター」はどういう順序で作られたんですか?
甲田:あのゲームは、研究期間がすごく長かったんです。命題がとにかくリアルなドラゴンを作るというものだったので、たとえばゲームの中で最大のオブジェを出そうと、ラオシャンロンというモンスターを研究していたりして。そういう研究があったので、ずっとどういうものかは見えていたんです。そのあと、僕が作曲担当になって。テーマ曲は当初はああいう曲じゃなくて、民族音楽っぽくしてくれって言われて作ってたんです。でも徐々に出来上がっていくゲームの世界が壮大だったんで、「オケにさせてくれ」と頼んで。
佐野:サウンド側から「オケにさせてくれ」って言ったんですか? ほとんどの会社で失敗してることじゃないですか!(笑)
甲田:かなり主張したんですよ。「この曲は絶対オケにさせてくれ」って。
坂本:庄司さんはどうですか?
庄司:企画の仕様書を見て全体像をイメージしてから作曲に入る事が多いです。完全にスケジュールが先に決まってて絵を待つ余裕がない事が多いので、先にラフっぽいものを作っておいて、絵が来たときに合わせますね。基本的に曲を作ってるという感覚よりも、ゲームを作ってる感覚のほうが強いですし。
坂本:そこは分れますよね。曲先行の人と、トータルイメージを考える人と。
いとう:僕が『ポケモン不思議のダンジョン』の曲を作ったときには、かわいらしい世界観の中に暗い展開があるので、それに合わせて「日の光に当たっちゃダメだよな」って思ったりして、世界観にどっぷり浸かったりしてましたね。
坂本:彼の家の前が公園なんですけど、あるとき「今日締切ですけど、曲ができません」と言いだして。「なんで?」って聞いたら、「目の前の盆踊りで、ずっと『マツケンサンバ』がかかっていて、作る曲がすべて『マツケンサンバ』になっちゃうんです」って(笑)。
一同:(笑)
いとう:あれはキツイですよ。作っている曲に『マツケンサンバ』のフレーズが入ってきますから。