2008年9月25日。「アクアノートの休日」の待望の新作が発売された。
この『AQUANAUT’S HOLIDAY ~隠された記録~』という作品では、音によって海の中の魚たちとコミュニケーションをとることができるなどサウンドは非常に重要なファクターとなっている。
楽曲や効果音がどのように作れられ、誕生したか、 中でもゲーム史上初の試みである楽曲の自動生成システムについても深く掘り下げていきたいと思う。
(インタビュアー 川越康弘(株式会社ノイジークローク))
坂本 「ゲームをがっちりプレイさせていただいていますが、やばいですよ。メチャクチャ面白いです」
山口 「ありがとうございます」
坂本 「僕のライフサイクルの完全なる一部になってますよ。水中を浮遊する感覚を存分に味わいつつ、コレクションの要素もかなり楽しんでいます。コレクションに関しては、僕は良い意味で苦手というか・・・」
山口 「坂本さん、とことん集めたくなるタイプですか?」
坂本 「お察しの通りです。すでにもう相当アクアライブラリを充実させたという実感があったんですけど、それでもまだ小型種が60種類くらいなんですよ」
山口 「なるほど。延々ありますよ。僕もまだコンプリートできてない位ですから(笑)。350種くらい魚がいるんですが、『こんなもの見つけられるか!』っていうくらい希少な魚もいるんですよ」
坂本 「・・・。全部見つけなければ気が済まない性格なので・・・頑張ります」
山口 「魚群の中に一匹だけ違う種類の魚が混ざっているとか」
坂本 「あ!それはプレイしたときに気になってたんですよ。カーソルが一瞬『NEW』になるんですけど、泳ぎも速いし群れに紛れてしまって追いつけない魚がいますよね?」
山口 「そうなんです。普通にやったらカーソルは合わせにくいですけど、LRボタンで鳴らすソナーを使うと見つけられるんですよ」
坂本 「なんとぉぉぉぉ!!」
山口 「魚にはそれぞれ好きな音と嫌いな音があるんですね。ですから、魚群に向かって嫌いな音を出すと、パーッと散るわけで す。そうすると、一匹逃げないで残る魚がいる、と」
坂本 「なるほどー!!」
山口 「最初のその仕掛けを聞いたときは、『誰もわからないだろう?』と思ったけど、面白いから採用しました(笑)」
坂本 「ははは」
山口 「そうそう、魚探しといえば、こんなテクニックがあります。ゲーム中で写真を撮ることができるようになるんですが、写真の情報覧にドルフィン号からのコメントとして、写っている海洋生物の名前が入っています。その中に???があれば、どこかに未発見の魚が写っているので、探すヒントになると思います」
坂本 「そ・・・そんなワザが・・・。早速活用させて頂きます」
----数々の仕掛けが存在する「AQUANAUT’S HOLIDAY」の海ですが、モデルとなった海は存在するのでしょうか?
山口 「当初は『こういう魚を入れよう』とか、そういったアイディアは決まっていたのですが、舞台設定などは決まっていませ んでしたね。シナリオや構成などを構築していくうちに、だんだんと南太平洋に決まっていきました。最初はカリブ海とい うプランもあったんですよ」
坂本 「なぜ南太平洋なんでしょう?」
山口 「やはりサンゴ礁をモチーフにしたかったのが、舞台を南太平洋にした大きな理由のひとつだったと思います。南太平洋というモデルをベースにしながら、自由にたくさんの魚が泳ぎまわる『キシラ環礁』を構築していきました。本当の南太平洋ではありえない魚種の組み合わせなどもありますが、そこは『それがキシラ環礁なんです』ということで(笑)」
----海のデザインはもちろんですが、ユーザインターフェイスなども大変洗練されていますよね。一方で、ロード中 のイルカのマークや、シンガーにノックした時の魚の反応など、かわいらしい表現も散りばめられていて、とても暖かみを感じますよね。
坂本 「そうですね。テキストは山口さんが書かれたのですか?」
山口 「私とシナリオライターの二人ですね。」
坂本 「主人公の『・・・、と』という口癖は山口さんの口癖ですか?」
山口 「いえいえいえ(笑)、あれは、シナリオライターの彼ですね」
坂本 「そうなんですか?ついつい真似したくなっちゃう・・・と」
佐野 「全然、関係ないんですけど、「AQUANAUT’S HOLIDAY」のロゴマークと、私のこ の髪の毛を留めるゴム似てませんか?」
(突然の発言に静まりかえる一同)
坂本 「佐野さんの第一声、それですか?・・・しかも本当に関係ないですね。写真を撮ってみましたが、イマイチよく分からない・・・ところで、川越(インタビュアー)のコレ(髪の結び目)も何かのモチーフなの?」
----「ええ、そうなんです。実はサンゴの・・・」
坂本 「あぁなるほどね・・・っておい。サンゴのモチーフって。サンゴはサンゴだと思うけど」
山口 「どこにでもモチーフは転がっている、という事ですね」
坂本 「おぉ、山口さんのスーパーフォロー出ました。川越九死に一生を得ました」
----orz
山口 「ユーザーインターフェースのデザインも、の水泡のような球体のイメージが まずあったんですね。そのモチーフをデザイナーに伝えて、作っていきました」
坂本 「統一感がある美しいインターフェイスですよね。デザインといえば、アートディンクさんに伺った時、ちょうど山口さん がDolphin 02号のデザインの説明をされていて、細部にとてもこだわっておられたのが印象的でした」
佐野 「デザイン画のラフスケッチを書かれていたんですが、その絵がまたとてもいい味で、愛情がひしひしと伝わってきましたね」
山口 「細部までは指示は出さずに大まかなアイディアだけをまずデザイナーに伝えて、いいボールが返ってきたら『お、いいね !』という具合に進めるのが私流なんです」
----『ミーム(MEME)』についても伺わせてください。これはリチャード・ドーキンス『利己的な遺伝子』以降、紹 介されている、『ミーム』がモチーフなのでしょうか?
山口 「そうです。最初の世界観を決める段階で『利己的な遺伝子』を読み直す機会があったんですね。魚と音でコミュニケーションを取るというシステムは初代のアクアから継承したかったのですが、コミュニケーションの手段をもう少しゲーム的に演出したいと思いました。シンガーの発する音列を覚え、それをソナーで再現していくという行為が『ミーム』の概念に合うかな、と思ったんですね」
坂本 「ゲームシステムとしても秀逸ですよね。シンガーを探して、ソナー を発して、コミニュケーションして、ミームがたまり、ドルフィン号 のレベルが上がるというサイクルは気が付いたら何時間でも遊べて しまいます」