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悪魔城ドラキュラ ジャッジメントJudgment

1986年のMSXパソコン販売以来、その音楽で多くのユーザーを魅了して来た「悪魔城ドラキュラ」シリーズ。今回の楽曲制作はディレクターに、PSP専用タイトルでお馴染みの「無限回廊」の音楽を担当した坂本英城、さらに今回のオリジナル作曲と過去のシリーズからの楽曲のリミックス版を浅田靖が担当している。実際にゲームで使用されている過去作品からの音楽アレンジを含むこのサウンドトラックアルバムは、ファンにとっても見逃せない内容だ。音で懐かしさを味わいつつ、お馴染みのキャラクターを操作しながら新しい「悪魔城ドラキュラ」を存分に楽しめること請け合いだ。
シリーズの歴史を振り返りながら、今作の音楽作曲のプロセスについて語らせて頂いた。
[取材:ジェリアスカ 翻訳:佐藤領二郎]

GameSetWatch (以下GSW):  坂本さん、この度はインタビューへのご協力ありがとうございます。

Sakamoto: こちらこそ、このような機会を設けて頂きましてありがとうございます。

GSW: 以前は「無限回廊」と「龍が如く2」のインタビューでお話し頂きました。今回も非常に楽しみですが、まずノイジークロークさんがこちらの「悪魔城ドラキュラ ジャッジメント」のプロジェクトに参加する事が決まったいきさつをお話ください。

Sakamoto: いきさつですが私がノイジークロークを立ち上げてすぐの頃から、ずっと暖かく見守っていて下さったコナミのご担当の方がおられまして、その方からのオファーでしたので、何が何でも良いものにしようと気合十分のスタートでした。私自身、ドラキュラの大ファンでしたし、今回の作品ではのちに浅田が作ることになるオリジナル曲以外にも、私がゲームで聞き慣れてきた往年のドラキュラの名曲たちのアレンジという大役を仰せつかるということでしたので、最初にお話を頂いた時にはその緊張感と、ノイジークロークをご指名頂いた嬉しさとがブレンドされた不思議な気持ちでした。

hideki sakamoto

GSW: Wii専用タイトル「428 〜封鎖された渋谷で〜」では作曲を担当されていますが、こちらのタイトルはファミ通の評価で満点を獲得した注目の作品です。こちらのプロジェクトでの坂本さんのお仕事と、「悪魔城ドラキュラ ジャッジメント」のお仕事ではどのような違いがありましたか?

Sakamoto: 「428 〜封鎖された渋谷で〜」では私は作曲家として携わり、「悪魔城ドラキュラ ジャッジメント」では楽曲のディレクターとして携わりましたので作業内容自体は違うわけですが、どのような楽曲に仕上げようか、ということを考える点においては作曲家もディレクターも同じですね。そういう意味で言うと、「428 〜封鎖された渋谷で〜」はオールラウンド力を試されたハードルの高いお仕事だったと思います。楽曲もダンスからテクノ、ファンク、ボサノバ、そしてクラシックと、幅広く制作したんですね。逆に「悪魔城ドラキュラ ジャッジメント」はコンセプトがはっきりしていました。それだけに作りやすい面もあれば、違いを出しにくく苦労する面もあったかと思います。作曲という意味では対照的なお仕事だったかもしれません。

GSW: 今回、浅田さんにアレンジをお願いする事になったいきさつをお話しください。

Sakamoto: 最初の打ち合わせの中で「ゴシックホラー的オーケストラ+ロック」というキーワードが出てきたんですね。これはもう本作の世界観にばっちりはまるのではないかということで、あっという間に音楽の方向性は決まったと記憶しています。これも歴史ある本作の持つパワーなのではないかと思いますね。そのお話をしながら、これは作曲担当者は浅田靖しかいないな、と決めていました。彼の最も得意とするジャンルですし、クオリティに関しても絶大な信頼を置いておりましたので、彼以外の担当者は思い浮かびませんでしたね。浅田は作曲も素晴らしいですが、ギターの腕前も十分世界を狙える技量を持っていると思っているので、まさに適任だと思いました。

yasushi asada

GSW: 浅田さん、今回はインタビューにご協力いただきありがとうございます。早速ですが、株式会社ノイジークロークでお仕事を始めたのはいつからですか?また音楽制作会社でお仕事をすることになったきっかけをお話しください。

Asada: ノイジークロークでは、確か2005年末頃から、少しずつ仕事を任せてもらえるようになっていきました。最初は別の会社で、着メロMIDIデータ制作の仕事をずっとやっていました。その間、デモ楽曲を作りためて、度々音楽制作会社などへ送ったりして、少しずつゲーム音楽の仕事を増やしていきました。

GSW: 20年以上にも渡る「悪魔城ドラキュラ」シリーズですが、シリーズの独自性を表現する上で今回一番重要だったことは何だと思いますか?

Asada: やはり自分の演奏したギターを盛り込むことだったと思います。また、アレンジは極力豪華な感じに、オリジナル曲ではコード進行を個性的なものにしようと意識しました。あとは、今ある機材で精一杯音作りをしようと努力しました。

GSW: 制作中は株式会社コナミデジタルエンタテインメントの音楽プロデューサーと音楽の方向性についてなどの話し合いはありましたか?

Asada: はい。曲が出揃った時点で、一度打ち合わせに参加しました。 アレンジをもっとゴージャスに、というリクエストがありましたが、大きな方向性の変更などはありませんでした。

GSW: ノイジークロークさんのサイトでは浅田さんはハードロック、ヘビメタのギタリストとして紹介されていますが、ギタリストという立場から見るゲーム音楽の魅力についてお話しください。

Asada: ギターは、コードの抑え方に限界があるので、打ち込みも駆使するゲーム音楽は、自由な感じがします。民族音楽的な楽曲が多く使われるゲームミュージックは、音楽的にも非常に惹かれます。

GSW: ゲーム音楽の歴史を見ても、この悪魔城ドラキュラを凌ぐほどのハードロックを取り入れた作品は無いと思いますが、プロジェクトに参加する以前はこのタイトルをご存知でしたか?またコナミのアーティスト参加のアレンジアルバムについてはご存知でしたか?

Asada: 確か子供の頃、ファミコン時代のタイトルをやった記憶があります。アレンジアルバムは知っていたのですが、過去の作品の曲やCDなどは、あえて参考にしない方が、個性が出たり新しいものができると思い、聴かずに制作を進めました。

GSW: 今回の「悪魔城ドラキュラ ジャッジメント」の音楽にはMSXやプレステ、DSといった他のハードからのタイトルのアレンジ曲が出てきます。それでいて全体を通して音楽のスタイルが統一されている印象を受けますが、音楽の全体的な方向性で気をつけた事などはありましたか?

Asada: 音楽の方向性については、既にコナミさんと坂本さんの間でイメージの擦り合わせがなされていて、その音楽スタイルや方向性から、今回私を最も適任の作曲家として選んで頂いたのだと思います。また、原曲がクラシカルなイメージの楽曲が多かったこともあって、自然と統一されたのだと思います。ゴシックホラー的なオーケストラにロックの要素が加わる感じ、を念頭に制作を進めていきました。

GSW: 「悪魔城ドラキュラ ジャッジメント」のキャラクターデザインは小畑 健さんが担当されていますが、イラストから受けるイメージで音楽に影響与えた部分はありましたか?

Asada: 最初にキャラクター資料を見せていただいたとき、とてもかっこいいイラストだったので驚きました。改めてこの作品に関われることを嬉しく思いました。ドラキュラの不気味で恐ろしい世界観は、もちろんあるのですが、その中にクールな面や美しさも感じて、それを音楽でも表現できればと考えました。エレキギターが入っている曲でも、木管楽器やハープなどの音色を使ったのは、イラスト資料の影響が大きいのかも知れません。激しくも美しい感じが、アレンジで表現できたと思います。

GSW: コナミ矩形波倶楽部や山根ミチルさんによって「悪魔城ドラキュラ」シリーズの音楽はアレンジされ、多くのゲーム音楽ファンから絶賛されています。「悪魔城ドラキュラ ジャッジメント」の音楽でものシリーズ二作目からは 「Bloody Tears」、三作目からは「Mad Forest」 そして悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲からは「Alucard's Theme」などが使われていますが、別のハードからのゲーム音楽をWiiへ移植するということでどういった事に重点を置いて取り組まれましたか?

Asada: 今回は、内蔵音源ではなくオーディオで、自由に音楽制作ができますので、いろいろな楽器を入れたりギターを盛り込んだり、すべての曲に言える事ですが、豪華なアレンジにしようと努力しました。移植するという点では、原曲がわかる程度にアレンジすることに気をつけました。

GSW: マリア・ラーネッドのテーマ 「Slash」は 「悪魔城ドラキュラX 血の輪廻」からの曲ですが、マリアの力強さもエレキギターによってそれが表現されていると思います。その他ではマリアをどういった人物としてとらえ、曲を仕上げましたか?

Asada: 天真爛漫で無邪気な女の子という感じのキャラクターなので、元気がよく力強い感じが、曲に現れたと思います。またこの曲は、原曲を聞いたときに、なんとなくメランコリックとかラテン的にしたいと思い、ナイロンギターやアコーディオンなどの音色も使いました。これもまた、元気のよさを表現していると思います。

GSW: 「悪魔城ドラキュラ奪われた刻印」よりシャノアのテーマもまた、プレイヤーの記憶に強く残っている音楽の一つだと思います。シャノアは非常に冷静なキャラクターのイメージがありますが、音楽はエネルギーに満ちあふれています。元の曲はニンテンドーDS版からですが、オーディオのスペックの違いもあるなか、DSからWiiへの音楽の移植というので工夫した部分などはありましたか?

Asada: やはりオーケストラ楽器を使い、統一性を意識しました。ロックドラムやエレキギターを盛り込んだこともあって、力強い曲になりました。ですが、基本的には原曲を大切にしながらアレンジできたと思います。

GSW: 「悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲」より「Dance of Illusion」がありますが、この曲はシリーズを通して唯一共通の敵役、ドラキュラの曲ということで重要な曲の一つだと思いますが、他の曲と比較しても目立つようにと心がけたことはありますか?

Asada: 特別目立つように意識はしませんでしたが、曲の冒頭は、原曲に比べかなり違う感じになっています。変わったコード進行で個性を出しています。因みに、後半部分は「Black Night」をアレンジしたものです。

GSW: 「悪魔城ドラキュラ」シリーズは戦いが主なゲームの要素となっていると思いますが、サントラではいくつか管楽器やハープ等を使った優しい雰囲気の曲もあります。戦いという要素が多い中、こういう音楽を入れるという事での効果は何だと思いますか?また、この静かで落ち着いた雰囲気の曲を通して表現したかったものは何でしょうか?

Asada: 静かな曲でも不安や不気味さは表現できたと思いますが、その中で美しさやクールな雰囲気も感じてもらえると嬉しいです。

GSW: オリジナル曲の「Darkness of Fear」ではロック調のキーボード、またゴシックスタイルな合唱を取り入れるということでシリーズを通しての「悪魔城ドラキュラ」らしさが巧みに演出されていると思いますが、ご自身がこの曲を作る際にはやはりシリーズの音楽の傾向を参考にしましたか?またゲームシリーズ外で影響を受けた音楽などはありましたか?

Asada: ありがとうございます。この曲はコナミさんにもとても好評でした。今回は自分のオリジナリティを重視したかったので、過去のドラキュラシリーズの音楽は、あえてあまり参考にはしませんでした。しいて言えばネオクラシカル系のヘヴィーメタルバンドなどの影響が大きいと思います。あとは映画のサウンドトラックも参考にしました。

悪魔城ドラキュラ ジャッジメント オリジナルサウンドトラック

発売日 2009/01/15
種類 CD
商品番号 LC1715
発売元 KONAMI
メーカー希望小売価格 2,500円(税込)

>>サウンドトラックの公式サイトはこちら

© 2009 Konami Digital Entertainment