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坂本:これはもう、使われましたか?
中村:僕はもらいましたよ。何に使ったかは覚えてないですけど…。
庄司:俺ももらいました。何か反感買いそうですけど、全額募金したんですよね。
中村:あ、すごい好感度が上がる!(笑)
庄司:それが目的ではないんですが(笑)、俺は定額給付金の制度を疑問視してるんですよ。そもそも受給を拒否しようと考えてたんですけど、ただ、そうしたところで納得できる使われ方はされないと思ったんで。だったらいっそ募金しようと。
細江:拒否すると、市役所とかが儲かるだけなんだよね。
坂本:このへんの話には、佐野さんはあまり食いつかれないですね。
佐野:理由を述べさせて頂くと、まったく知識がないんですよ僕。「皆さん、よく知ってらしゃるなぁ」と思って(笑)。そもそも、定額給付金ってどうしたっけなぁ。基本的に書面処理がホント苦手なんですよね。会社もそうなんですけど。ちなみに定額給付金って、いくらもらえるんですか?
坂本:1万2千円ですかね。
細江:家族構成によるね。
中村:65歳以上と18歳以下は2万円だから、佐野さんちのお子さんは2万円もらってますよ。
佐野:あーっ! そうだ、ウチの息子が言ってた。クラスでも話題になってるらしいんですよ。感覚的には「お年玉が来た」くらいな。で、そのお金は自分のものだから、というイメージで。
光吉:ウチの子供もまったく同じこと言ってますよ(笑)。
佐野:やっぱりそうですよね。クラスで流行ってるんですよ、小学校の中でね。
光吉:「いくらもらえるんだろう?」って言ってましたよ。
佐野:僕はもう、一刀両断ですよ! 「もらえるとか、何言ってんの?」って。
中村:恐怖政治だ(笑)。
佐野:定額給付金はウチの息子に、ラーメンに海苔をトッピングで(笑)。
坂本:これははっきりしましょう。結局、この中で誰が一番モテてるんですかね?
佐野:やっぱ光田さんかなぁ。
光田:いやいや、僕ね、女性っ気はまったくないんですよ。ごめんなさい!
坂本:違うんですよ、女性っ気があるかじゃなくて、「キャーキャー!」言われるかどうか。
佐野:それはやっぱり光田さんでしょう。
光田:いや、佐野さんじゃないですか?
佐野:僕はモテるのとは違うんじゃないですかね。
中村:甲田さんは結構モテるんじゃないですか?
光吉:甲田さんはもう、とっかえひっかえですよね(笑)。
一同:(笑)
坂本:こうやって見回すと美男子が多いですね~。
光田:でも光吉さんだって、ライブのとき凄かったですよね。
佐野:どっちかって言うと、低い声の声援が多かったですけどね(笑)。YMOだったら細野さん的な(笑)。
光吉:あ…ありがとうございます!
坂本:やっぱり、光田さんが一番ですかねぇ。
光田:そんなことないですよ!
光吉:光田さんもズルイよなぁ(笑)。古代さんがいたら、あの方も入りますよね。あの、子犬のようなつぶらな目で見られると…。
坂本:(取材に来られていたエンターブレインさんを見て)これこそ、ファミ通さんに伺いたいですよね。一般的にどう思われてるか…。
光吉:よく雑誌で「抱かれたい芸能人」とかありますもんね。
坂本:「抱かれたいゲームコンポーザー」?
佐野:絶対イヤだ、そんなの! ホントにやんないでほしい!! でも細江さん昔、好きな曲とベッドの上でのグルーヴが似てるって話で盛り上がりませんでした? あの、テクノ系が好きな人はくり返しが多い、ファンク系の人は後ノリみたいな…。
一同:(爆笑)
佐野:で、そのときに女の人もいたんですけど、「じゃあどんな曲だったらいいんだ」「結果どんなんだったらいいんだ」みたいな話になっちゃって。その答えは全然覚えてないんですけどね。まあ、テクノは人気なかったですよ。何でかって言うと、くり返しが多いから(笑)。だからと言って、どうですかねぇプログレみたいなのは。
光吉:変拍子ですか(笑)。
佐野:変拍子かつ長い! みたいな。
光吉:フュージョン系は独りよがりとかね(笑)。
佐野:ソロがね(笑)。今ちょっと、「タモリ倶楽部」みたいで良いですね!
坂本:あははー痛たたた、お腹痛い!ここはやっぱり、甲田さんのご意見を…。
甲田:今、変拍子って言おうと思ってたところで言われちゃったから(笑)。あとは、テンポチェンジ?
一同:(爆笑)
佐野:いや、この話は面白いですよ!
いとう:変拍子、テンポチェンジと並んでて、定期的にユニゾンが入れば(笑)。
佐野:僕はテンポチェンジは全然ないですね。
光吉:でも、終わり際にテンポ上げませんか?
一同:終わり際!(笑)
佐野:僕はクレッシェンド、クレッシェンドですよ! この話は音楽用語縛りにしましょうよ。「ダ・カーポの方はいませんか?」(笑)。
光吉:「ダルセーニョ」みたいな。
いとう:年齢的にはダルセーニョはキツイ、とかそういう話ですよね。
佐野:(爆笑)面白い! そういう切り口で話したらスゴイですね。いやー、大人の会話ですねぇ。
坂本:僕は最後はリタルダントです。皆さん知的ですね。
佐野:だって音楽の話しかしてませんから!
光吉:スタッカートはどうなんだ?
佐野:僕はピチカートなんで(笑)。
坂本:トレモロの人はいますか?あとはエンディングにフェルマータとか…。
細江:年齢的には、そろそろデクレッシェンド…。
光田:またの名をディミヌエンド…。
佐野:(笑)異常に盛り上がってますね~。流石、ボキャブラリーがあるからすごい!
光吉:結局、質問の答えは出てないんですけど(笑)、甲田さんですか?
甲田:ていうか、もっとモテると思いませんでした?
坂本:あー、思いました。ゲームコンポーザーはモテ仕事だと。でもいざ仕事に就いたら「こんなはずじゃなかったのに」みたいな。モテるためにはどうしたらいいですかね?
佐野:考えてる時点で、すでにNGですよね(笑)。
坂本:(爆笑)ですよねー!じゃあこの質問は「光田さんが一番もてる」ということで、次行きます!
光吉:え?坂本さんの個人的な質問ですか?
坂本:はい、ちょっと悩んでまして…。僕ずっとヒゲ生やしてるんですよ。
佐野:…ていうか、坂本さん太りました?
坂本:ですよね…。
中村:これ、どこで撮った写真ですか?
坂本:ラスベガスなんですけど。
佐野:ラスベガスで…これはどういう画なんですか? グラビアか何か? いたずらに、着てる服にばっかり目がいくんですよね。
坂本:これは僕の自慢のファッションですよ!
光吉:ハワイっぽいよね。
中村:ロサンジェルスっぽいかもしれないよ。
坂本:そういうロケーションの話じゃなくて…。
佐野:着てるTシャツは「ウルトラQ」的な、こう…。ご自分で染められたんですか?
一同:(笑)
坂本:いやー、めちゃめちゃ役得ですよ。このメンバーにこんなしょうもない質問をする快感!
佐野:すいません、今、軽やかにヒゲはパスして話してたんですけど(笑)。そのヒゲって、コンスタントに切られてるんですか?
坂本:すいません、ウチの奥さんがいつも切ってくれまして…。
一同:ウェーーイ!
佐野:やべーー!俺の大嫌いな「他人のノロケ話」を自分から振っちまったー!!奥さん、ヒゲはどんな感じで切るんですか?
坂本:いつもキレイな形に、あのカワイイ奥さんが切ってくれるんですよ。
佐野:あの…そういうこと言って、2人だけになったときに怒られたりしないんですか?(笑)
坂本:いや、むしろ言ってくれっていうくらいですよ。
中村:結婚してどれくらい経つんですか?
坂本:3年ですかね。付き合ってた時期を入れると……って、この話興味あります?(笑)
一同:(笑)
佐野:ヒゲよりは全然!
坂本:僕の質問が台無しですよ!
佐野:ヒゲなんて、剃っても生えてきますし! 何なら眉毛も剃ってくれてかまわないですよね。
一同:(笑)
坂本:みなさんお付き合い頂きありがとうございました。いよいよラスト2問なので、次はちょっと真面目な質問です。
坂本:例えばタイアップだとか、一部の曲を作ってもらうときに、音楽業界の人に書いてもらったらもう最初から権利も印税もすべてあるのに、ゲーム音楽業界の人は、やっぱその辺は最初から買い取りが当たり前になってるのがどうなんだろ、みたいな。
細江:昔だったら、内蔵音源だったからっていうので、かなり…。
中村:そうですね。
坂本:昔はプログラマーさんが曲まで作ってたりとか。
佐野:ものすごい昔ですけどね。
坂本:そういう歴史が、今でも脈々と続いてるんですかね。
佐野:今はそれは無いような感じですよね。
坂本:結構でも、何でしょう? ゲームコンポーザーを目指してる方々は泣いている人がいると思うんですよね。すごい良い曲作っても権利完全買取で使われ放題。でも音楽業界の作家は、曲作る前から権利とか認められてるのが前提っていう矛盾。
中村:でも、音楽業界の作曲家さんが、すごくお金持ちで儲かってたら「何でこんなに金額が違うんだろう」って思うかもしれないですけど、そんなに儲かってないから、あまり変わらないかなとは思いますね。だからアーティストで、自分で看板張ってるようなタレントさんだったら、自分の名前を売って仕事をしてる人たちなんで、またちょっと仕事の質が違うから。
細江:ほんのひと握りですよね。
中村:例えば、その人たちがすごく儲けてるかといえば、そんなには…。
坂本:いや、儲かってるかどうかではなくて、なんで最初っから条件が違うのかってことですね。最初の話し合いの時点でもう、違いがあるじゃないですか。そういうのって全然ご経験ないですか?
光吉:大きい話をすると、ステータス的に下に見られてるのかなって思う時もありますよね。
坂本:音楽業界のアーティストたちよりもってことですよね。でも、実際作ってる曲とかのクオリティって、互いに遜色ない部分もあるし、何かイメージだけで決められちゃってるなっていう印象はあるんですね。
光田:明らかに言えるのは、ゲーム業界の法務の方々に知識がないってことだと思うんですね。だけど一から説明すると「え、そうだったんですか?」という方がほとんどなんですね。だから僕なんかは「権利買い取りだったらやりません」って言うようにしてるんですけど、それは説明したら分かってくれるんですよ。権利をあげると何もかも取られてしまうんじゃないかっていうそういうイメージが法務の方々にあるんですよね。だからそれは、どんどん払拭していって、お互いに出来上がったものを使って有効活用しましょうっていう感覚にすれば、たぶん全然問題なくいけると思いますけど。まだ、ゲーム業界はそういうシステムが成り立ってない。で、音楽業界はゲームよりも昔からやってるんで、そのシステムがもう定着してるじゃないですか。だから安心感があるんですよ、法務の方々から見ると。だから、ゲーム作曲家の地位が低いんじゃなくて、法務の方が知らないだけっていう。それを皆で勉強して浸透していけば、普通にいけると思うんですけどね。
坂本:例えばサウンドクリエイターに権利を与えましょうってなったときに、グラフィックの権利、プログラムの権利みたいな、それぞれが手を挙げ始めて「うわーっ!やめてくれー!」てことになったりしませんかね?
光田:どうなんですかね?でも圧倒的に作曲家のギャラは作業量に比べて安いですからね。
佐野:「そんなの知らねえよ」ですよね。
一同:(笑)
佐野:でも、サウンドに権利を与えたら他の人も主張してくる、と言う理屈で権利を認めない人は多いです。
光田:イラストレーターで権利もらってる方もいますよね。
佐野:やる人もいますよね。だから「言ってナンボ」なんですよね。でも法務的に言うと、基本的にゲームを作るときって、ゲームをまるごとでの契約書を起こすんで。そのときって、要はゲームの曲も全部そこにインクルードされちゃうんです。そうすると、曲だけで新しい契約をっていうのは、これは例外を組まなきゃいけない。そうなると、法務の人はめんどくさいんですよね、はっきり言って。仕事増えるから。そこをどうしていくかなんですよね。
細江:パブリッシャーかデベロッパーかでも、ずいぶん変わってくるよね。
佐野:変わりますよね。
光田:ただ、作家としては自分のライブをやるのに、ゲーム会社さんに「あの曲を使わせてほしいんですけど」っていうのはおかしいでしょ?っていう。何で自分の曲を自分で演奏するのにも関わらず、ゲーム会社さんにお伺いをたてなきゃいけないのか。なおかつ、それのお金を払わなきゃいけないっていうのは、絶対おかしいですよね。だから今、ゲームミュージックコンサートとか結構開かれてますけど、やっぱり権利関係ですごく難しい面が多々あるわけですよね。でも、ゲーム会社としては、そこで演奏されてなおかつ、ゲームの宣伝になるんですから、プラスになるわけですよね。で、作家も自分の曲が演奏されるってことにプラスになるわけですから、やっぱりみんなポジティブにこう、プラスになる方向に進んでいけばいいのに、何でそれをやらないんだろうっていう。
佐野:どこでしたっけ?最近フリーにしたとこ?
光吉:ああ、ファルコム。
佐野:あれ、ちょっと面白いですよね。
坂本:今日、古代さんがいらしてたら、聞きたかったんですけど…。何で「今」なんでしょうね。
光田:作家って、聴いてもらってナンボじゃないですか。使われずに廃れていくなら、ちょっとどうかなって思いますよね。だったらもう、好きなように使ってほしいわけですよ。動画サイトに流れようが、こっちとしては嬉しいわけですよ。
光吉:露出してナンボですからね。
光田:ですよね。そのへんの感覚を分かってもらいたいなぁ、っていうのはありますね。何か、真面目に話しちゃいましたけど(笑)。
佐野:坂本さんが、逆にそのへんで疑問に思ったり、理不尽に思ったりしたことがあるんだなぁって。
坂本:僕はもともとフリーですので、この仕事を始めた頃は業界と何のパイプもなく、有名な作品に携わった経験もなく、どこの会社にも属せずにやってきたんで、ホントに結構、嫌な目にあってるんですよね。なので、「同じことしてるのに待遇が違うじゃないですか!」っていうのに結構敏感ですよ。例えばそんな僕と、「先月CDメジャーデビューしました」とか「元音楽業界に居ました」っていう人がいて、それを1本のソフトであっちも何曲、こっちも何曲ってなったときに、僕の方は最初からもう買い取り。駆け出し当時は曲も1曲数千円~数万円みたいなのが、決まってるんですよ。対して音楽業界、まあ音楽業界っていうくくりが間違ってるかも知れませんけど、彼らにはちゃんと印税が入るし露出もする、みたいなところにずっと違和感を感じていて。何でそういうことが起きちゃうのかなっていうことと、それを何とか解決できないかなっていうことですね。
佐野:解決ということは、同じ良い条件でいきたいってことですか。
坂本:何で同じになんないのかなっていう。別に僕は今やってることや、今まで作ってきたことは全然嫌だったわけじゃないんですよ。全部印税で、果たして得してるかっていったら、そうじゃない場合もたくさんあると思いますし、お金はすべてじゃないと思ってるんで比較はできないんですけど、同じように作ってて、何で待遇とか契約が違うのって。作家の居場所とか出所が違うだけで、ということですね。
佐野:でも僕はね、違うべくして違うな、と思うんですよ。それは発注側というか、要はね、そこには音楽の質とか楽曲のクオリティとかっていう話じゃないんですよね。外に出す時って、それでハンコを付ける人に説得がいるんですね。例えば、ある程度名前のある人に発注するってだけで、やっぱりお金が動きますよね。
坂本:名前があるのは分るんです。それが商品の販促につながる。だから権利や印税の交渉も可能になる。でも名前が無ければ、作品自体を認めてくれる人がいればいいですけど、販促しか考えていないような人が上に立ってると、ちょっと意思を主張しただけで作家の代えなんかいくらでもいるという話でプロジェクト外されちゃうなんてこともしばしばで、フリーのコンポーザーは泣いている人も多いと思うんですよね。せっかく凄い才能があってもそういう理由で作品に関わっていけないってのは残念ですし業界にとっても良くない。だから僕が言ってるのは、明らかに販促力が無いと思われる場合でも、作家が身を置いてる業界によって待遇の違いがあることが問題だってことなんですね。
佐野:でも、そこに発注してるってことは、何らかの稟議書が動いてるわけですよ。ということは、そこで認めてる人がいるんですよね。
光田:アメリカの映画なんかは、例えば作家に1億あげますと。そのなかでオーケストラを録ろうが何しようが、貴方にお任せしますというスタイルで。でもその代わり、全部買い取りなんですよね。だからCDを出しても、印税は一切入らないんです。
細江:それはそれでアリだよね。
光田:そうですね。だからどっちかだと思うんですよ。ゲーム業界は今、厳しいので、権利はあげるので、ギャランティは少なくでいいと思うんです。低予算で開発するっていうのは当然アリだとは思うんですけど。そしたら「権利はあげます、CD作ってそれで儲けてください」っていう。ゲーム会社としては、ゲームで使わせてくれればOKなわけじゃないですか。そういうシステムを作っちゃえばいいんですよね。どっちでもいいと思うんですよ。1億くれて権利は買取られる。すごい低予算のギャラでやって権利は作家に帰属する。それはそれでどっちもいいと思うんです。難しい問題ではあると思うんですけど。
佐野:光田さんはあれですか、条件次第で「それはできません!」ていうケースは多い?
光田:いや、そんなことないですけど。要するにクライアントが何を作りたいかっていうところが、いつも問題なんですよ。「こんな壮大なゲームを作りたいんです」て言って、予算は少なめでオーケストラやってくださいって言われても、「それは無理ですよ」って話になるわけじゃないですか。だからその、作りたいものっていうのは前提にあって、どこにお金をつぎ込むかっていうのが、やっぱりゲーム会社さんの中だと、分からない人が多いですね。だからもう、プロデュースっていう面もやらないと、ただ曲を書いて納品するだけじゃやっていけないんじゃないかな、と思いますね。
光吉:やりたいことができないですよね。
光田:だからあれですよ、佐野さんが言ったバブリーな時代がまた戻ってきてくれれば(笑)。
佐野:ねーっ! でも坂本さんが言う「同じことやってんのに、何でこんなにギャラとか待遇が違うの!?」と感じるのは、さっきも言ったんですけどハンコを押す側が「音楽業界の方にやってもらうから」っていう考えがあるからなんですよね。そこで僕はですね、新しいキーワードを考えたんですけど。ちょっと、これは新しいですよ?
一同:聞きたい!
佐野:この日本社会は、「押印力」です。
一同:お、押印力?
佐野:これは何か!? まさにハンコを押す力!! これ、新書で出したい! 説得力なんていらないんですよ。根回し? 全然必要ない。今、必要なのは……。
一同:押印力!(笑)
佐野:今、坂本さんがこういう疑問を持ってらっしゃる。それはなぜか? 坂本さんは、押印力を持っている人との結びつきが弱いからなのです。もっと強めたほうが良いです。一気に変わります!
坂本:なるほど~! 実は今日はうちのクライアントの方が見学に来てくださっているので僕としては立場的に微妙です(笑)。
佐野:(そのクライアントの方に対して)ちなみに押印力はお持ちですか?
―:ちょっと弱めですけど…。
佐野:あー、じゃあすいません! 強くなったらご連絡頂けると…。
一同:(爆笑)
佐野:でも坂本さん、僕思うんですけど「無限回廊」で、弦楽四重奏っていう分かりやすいキーワードで縛ってやったと。あれってすぐに伝わるじゃないですか。そういうのって、押印力がある人に伝わりやすいんですよ。押印力がある人って、たくさんの情報を読めないんですよね(笑)。A4ペラでも無理です! もう1ワードなんですよ。キャッチコピー。「弦楽四重奏? 分かんないけど、良いじゃん!」って。
坂本:なるほど!凄く理解です!…って冷静になってみると、すいません、クライアントもファミ通さんも前にして僕の立場的にはすごい状況ですよこれ!ここで凄いことが起こってますよ!(笑)
佐野:つまり押印力。これです。
坂本:では、いよいよ次が最後の質問になります。もう、電車もなくなっちゃいましたけど、コンポーザーの皆さんにはウチからタクシー代を出しますのでご安心を!
一同:いやいや、結構ですよ!
いとう:…タクシー代の話をしてから、この質問ですか。
一同:(笑)
佐野:あの~、ゲーム業界に必要なのはタクシー代ですね(笑)。何だろう、「タクシー代」っていう言葉にパワーがあるんですよ。
光田:今日、ここに来るときにうちのスタッフから「光田さん、近いんだから自転車で行ってください」って。「タクシーに乗って行かないでください」って言われましたよ!(笑)。
中村:やっぱり、タクシー代ですよ(笑)。
坂本:うーん、違うんです! 皆さんのお答えは、僕が求めてたものとは…何か違うんですよ!!もっとこう夢のあるですね…。
佐野:タクシー代じゃなくて、必要なものですかぁ? あるのかなぁ…。タクシー代があれば良いと思うんですけどね(笑)。
細江:リッチなゲーム会社かな。
佐野:それでタクシー代が払われて…もう、いいか(笑)。
坂本:1人ずつ言っていきましょうか? 庄司さんはどうですか?
庄司:もう、タクシー代って言われた時点で、それしか思いつかないんですけど(笑)。でも、前の質問を思い出したんですが「ゲームクリエイターになりたい」っていう方への答えって、リッチなゲーム会社のためにも経済を学ぶ必要があるってことなんですかね?
佐野:経済を学んじゃうと、たぶん来ないですよね?(笑)
中村:ゲーム音楽業界っていうのを形成していくのか、音楽業界のなかのひとつになるのか、というのが大前提として、まずあると思いますよ。今はゲーム音楽だけじゃなくて、CMもやってる人は結構いるので、そういう境はなくなってきてるんですけど、あえてそれを「ゲーム音楽業界」っていうのを作るべきなのか、ボーダーレスにするべきなのかはありますね。
佐野:坂本さんはゲーム以外もやりたいという思いはある?
坂本:やりたくないですね、僕は。ゲームが大好きなんで。
佐野:例えばアニメ音楽を作ってください、みたいなオファーが来たら?
坂本:うーん、今のところ考えてないですね。興味がないわけじゃないんですけど。
庄司:皆さんゲーム好きですよね。
坂本:普段、ゲームはやります?
光田:やりますけどね。でも「ドラクエ」シリーズとか、1作もやったことないんですよ。
坂本:それは意外ですね!
光田:スクウェアの社員になった時に、「FFIV」を置かれて「とりあえず、これやっとけ」と言われて。1ヶ月くらいやったんですけど、クリアできなかったんですよ。それで「僕には、この業界向いてないのかなぁ」って思って(笑)。
庄司:それが最初の壁だったんですね(笑)。
佐野:入社してすぐってそういうこと思いますよね。危ないとこでしたね~。
光田:だからゲームは好きなんですけど、苦手ですね。
坂本:甲田さんはゲームやるんですか?
甲田:最近はあまりやらないですけど…。入ったきっかけは、もともとカプコンの格闘ゲームのアーケードチームがあったんですよ。とくに「ストII」が好きで。それでSFC版の裏に電話番号が載ってて、そこにかけるとずっとテープがくり返し流れるんですよ。そこの番号の末尾を変えれば代表につながると思ってかけたんです。
坂本:すごい! それでアプローチをして今の甲田さんがあると。アツい話ですね…ってあれ?また質問とは違う話になってますけど…(笑)、甲田さんが考えるゲーム音楽業界に必要なものって何ですか?
甲田:さっき言おうと思ってたのが「お金の匂い」。
佐野:あー、分かります!
甲田:ゲームありきで音楽じゃなくて、ゲーム音楽自体にもお金の匂いがしてほしいですね。
佐野:今はまったくしませんもんねぇ。むしろ死臭がします(笑)。良くないですこれは!!
坂本:いとう君は何かありますか?
いとう:この仕事に就くようになると、ゲーム音楽特有の作曲方法というか、ループ前提とか、いろんな独特なやつがありつつ、例えばほかの作曲家さんの曲を聴いていて、意外と作り手さんの裏が見えてくるような側面があるなぁ、という気はしますね。で、タクシー代の話に戻りますけど、今まで仕事してきて「安い」とか「タクシー代が出ない」とかの、いわゆる条件での待遇のところは致し方ないんだけれども、ほかのスタッフさんたちの良い物を作ろうという熱量がものすごい場合、全部が吹っ飛ぶシチュエーションがいくつかあったんですよね。原点に立ち返った情熱というか、「この仕事やりたいなぁ」っていう「想い」は大事ですかね。
坂本:良いこと言うなぁ~。光吉さん的にはどうですか?
光吉:この言葉を、僕は何の惜しげもなく、恥ずかしげもなく言わせていただきますけど……。ゲーム音楽業界に必要なのは「愛」です。これはゲーム音楽業界だけじゃなくて、世界的にそうなんですけどね。でも、実はもうゲーム音楽業界、ここにいる人たちは愛があるんですよ。結局、あと何がないかって言ったら、……お金?
一同:(笑)
光吉:「too much enough」なんですよ! ちょっと話ズレますけど、僕らの世代と若い世代のゲームを作るっていう愛情とか取り組み方とか、何かギャップがある感じがするんですよね。前は「愛がねぇなあ!」とか言ってたんですけど、彼らなりの今の仕事に愛を持てる、愛の持ち方っていうんですかね、それをやっぱり僕らがこう、指南するというか、持ってかなきゃいけないと思ってるんで。何か、まとまらなくなってきました(笑)。
坂本:メンタル的なことなんですかね?
光吉:そうですね。難しいですね。別に押しつけたらいいのかっていう話でもないと思うんで。
坂本:いとうが言っていた「情熱」とは違うんですか?
光吉:個人的にはそうなんですけど、そこが若い人にどこまで通じるかですよね。…とは別に、お金! でも、お金があることでできることってたくさんあると思うんですよ。ここにいるみなさんはみんな、お金があっても楽はしないですよ(笑)。あったらあったで、良い使い方をすると思いますよ。
中村:僕はさっき言ったことと同じで、「ゲーム音楽業界」というのを作るのかどうか。幸いにも、聴く側の人にはゲーム音楽っていうものを認めてもらってるんだけど、作り手のほうとしてはかなり曖昧だし。「誰がゲーム音楽の作家なの?」ていうのは、作る側からは別に形成されてるものじゃないですよね。個人ではそれぞれ思ってるんですけど。別にそれは宣言されてるわけじゃない。あえて「ゲーム音楽業界」というのを作るのかどうかというのは、今後ゲームの音楽をやりたい人だったら必要な選択肢になると思いますよ。ゲーム音楽業界というのを作るんだったら、例えばさっき話してた、ループの曲を作らなきゃいけないとか、ゲーム独特のセオリーがあったりするじゃないですか。そういう技術的なものを「ゲームの音楽をやってるんだよ」という方に求められてるんだったら、それを突き詰めていかないとだめだろうし。そういうものを身につけないといけないですよね、ゲームの音楽をやる人は。
坂本:なるほどなるほど!細江さんはどうですか?
細江:圧縮していうと「金」。
坂本:分かりやすい(笑)。
細江:まずはゲーム業界が、ちゃんとお金儲けできる状態になってくれないと「こういうことをやりたい」と言われてものめないんで。大本をなんとかしてあげないと。
坂本:佐野さんは?
佐野:僕、全然違う切り口で言っていいですか? これ、書きやすいですよ! たぶん必要なのは「20代のヒーロー」なんですよ。若いヒーロー。今23歳くらいで、すごく良い曲を書くゲーム音楽をやってる人が出てきて、そいつがもう、超カッコイイと。アイドルとか声優とかとガンガン付き合って(笑)。そうすると、「ゲームの作曲家って、そう言われれば…カッコイイんじゃない?」って世間的になりますよね。ゲームを全然知らない人が「ゲームの曲って自動的に作られてるんじゃないんだ!」って。
坂本:自動的にって…そんなことを思ってる人います?!(笑)
佐野:いますって。ちなみに、ウチのバアちゃんはそう言ってましたよ。
一同:(笑)
細江:同人の世界だと、20代のヒーローって結構いるね。
佐野:そうなんですよ。それを僕らがプロデュースしないと!
坂本:では、光田さんにお伺いしたいんですけど。
光田:皆さんの言ってることを総合すると、やっぱりプロデュース能力だと思うんですよね。それがやっぱりゲーム音楽業界に必要なものだと。作家1人1人が自分自身をプロデュースできる、若手を育てるっていうのもアリだし、お金を稼ぐためのプロデュースっていうのもアリだと思うんで。やっぱり今からはプロデュース能力が必要ですよね。
細江:なんちゃってプロデューサーって増えましたよね。
光田:増えたんですよね。でも音楽的なプロデューサーっていうのは、やっぱり音楽業界にはいるんですよ、まだ。胡散臭い、こうヴィトンのセカンドバッグを持ってね、肩にセーターを羽織った人なんですけど(笑)、やっぱり強力なカリスマ性があるんですよね。だから若い子もついてくるし、若い子も育つ。なんでゲーム音楽業界に必要なのは、カリスマ性のあるプロデューサーという意味では、作家自体がプロデュース能力を持ってないと厳しいかなって感じます。
細江:有能なディレクターもほしい。
光田:そうですね。プロデューサー、ディレクターっていうのは、結構重要なことだと思うんで。最近、芸能関係の方と付き合うことが多いんですけど、ゲーム業界と明らかに違うのはプロデュース能力なんですよね。強烈なんですよ。
坂本:なるほどですねぇ…(遠い目)。
光吉:あれ?坂本さんがまとめるんじゃないんだ?(笑)
坂本:あーすみません、聞き入ってしまいました。えーと、僕が今後この業界に必要だと思っていることは、今この瞬間、まさに自分がやっているようなことですね。自分がやっていることや皆さんの意見をどんどん世の中、それは日本だけじゃなくて世界に発信していって、たくさんの人に興味を持ってもらいたい。だから今日頂いた貴重な意見をウチのサイトに載せて、それが一般の人とかゲーム業界の人が、ゲームのサウンドというものに目を向けてくれるきっかけになればいいなって思ってるんですよね。
光田:今回、坂本さんが皆さんを集めて座談会を開くっていうのも、ひとつのプロデュース能力ですよね。それはすごいと思います。
坂本:あー!今、僕…褒められました? 滅多にないことなんで、すごく嬉しいです!!
一同:(笑)
坂本:ところで、そろそろこの座談会も終了なんですけど、皆さん、今日のこの試み…どうでしたか?
佐野:「飲んだなぁ~!」みたいな感じですね(笑)
坂本:「こんなのは2度とお断りだ!」みたいなのはあります? 大丈夫ですか?
光田:何言ってるんですかー。
佐野:俺もこれだけ喋りたおしておいて、それはないですよねえ……。
一同:(笑)
佐野:僕はかなり良い気持ちですよ。だって学生時代に「佐野はうるさい! とにかく喋るな!」てずっと言われてたんですよ。それが今、喋って喜ばれるっていうね。大人になってみるもんだなぁ(笑)。長生きはするもんですよ。だから、今ちょっと、人生に先が見えない若手、例えばファミ通を読んでらっしゃる若手の方はね、異常に楽しいですから社会人は!とくにゲーム業界、待ってますよ。若手がなかなかいないですからね(笑)。
坂本:いやー、みなさん本当にどうもありがとうございました。では最後に、MVC(Most Valuable Composer)を本日インタビュアーで頑張ってくれた山本くんから発表したいと思います!
―:では、発表します!「第1回 ゲームコンポーザー座談会」のMVCは…。
「ダラララララララララララ…」(会場のテレビから流れ出す音)
いとう:あ!ティンパニロール!
光吉:用意がいい!
―:MVCは…………………中村隆之さんに決定します!!
一同:イェェーーイ!!
光吉:えーっ!!ブゥゥゥゥ!!
坂本:おめでとうございます!ちなみに中村さんを選んだ理由って何でしょう?
―:貴重かつ辛口なご意見をたくさん頂けたということで、中村さんを選ばさせて頂きました。
中村:おー、ありがとうございます!でも面白かったのは佐野さんじゃない?
―:佐野さんは私の中ではすでに殿堂入りですので…。
佐野:いやいやいや、ここは中村さんが選ばれるのが、トータルの面白さで考えると正解ですよ!
一同:おめでとうございますー!パチパチパチ
坂本:皆さん、おつかれさまでしたー!
一同:(大拍手)
素晴らしい質問をお送り頂きありがとうございました。
上記の方々には今回参加した9人のサイン入り色紙をお贈りします。 たくさんのご応募を頂き誠にありがとうございました。
まだ時期も場所も何も決まっていませんが、次回はライブハウスでお客さんに来て頂いて
というカタチでの座談会を計画中です。お楽しみに!
「FINAL FANTASY XI」 のアレンジ・アルバム第2弾!
『Sanctuary / THE STAR ONIONS』
発売日:2009年5月20日(水)
価格:¥3,000(税込)
品番:SQEX-10143
収録曲数:11曲
甲田雅人氏は、この中の5曲の編曲を担当。
公式サイトはこちら
(C)2002-2009 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
プロキオン・スタジオとキャビアが、アラフォー男性のみをターゲットとする驚愕のiPhone用アプリを開発中。ビデオゲーム前夜の白昼夢をiPhone上に実現。
ソングモードの自由度を拡大、かつDSiではDS-10が2台分の性能!
9/17発売予定
LUMINES supernova (PS3,Playstation Store で販売)
キューエンタテイメント株式会社
殆どの楽曲の作曲を担当、2005年からシリーズで、中村隆之の代表作です。
あそべる絵本~とびだスゴロク(Wii ware)
任天堂
全曲、全効果音の制作を担当。
ザ・歌謡ジェネレーション(DS)
株式会社AQインタラクティブ
ボーカル録音のディレクション、音ゲームの核、譜面データを制作。
Colours of Light −Yasunori Mitsuda Vocal Collection−
光田康典さんがこれまで手がけてきたヴォーカル曲15曲を集めたCD「Colours of Light −Yasunori Mitsuda Vocal Collection−」が2009年8月26日に発売されます。お楽しみに!
「From Loud 2 Low Too」
販売価格:3,150円(税込)
発売元:株式会社ウェーブマスター
セガを代表するサウンドクリエイター光吉猛修の楽曲を詰め込んだアルバム第2弾が登場!
歌うコンポーザーとして多くのCDをリリースしてきた光吉猛修が歌い上げて来た珠玉の楽曲を時系列で詰め込んだアルバム 「From Loud 2 Low」から6年。
満を持して最新収録曲を含めたWorksの第2弾「From Loud 2 Low Too」が絶賛発売中!
今回は2枚組となっており、DISC1には「From Loud 2 Low」をほぼ全楽曲を収録!
DISC2には光吉が歌い上げて来たバラード楽曲から珠玉のスローチューンをセレクトしました!
タイトルにもあります「高音から低音まで」あます事なく光吉ボイスをご堪能下さい!