真かまいたちの夜 11人目の訪問者(サスペクト)音楽座談会

初代『かまいたちの夜』から楽曲を選んだ際の基準は?

-- ありがとうございます。じゃあ、次に中嶋さんにお聞きします。本作には初代の『かまいたちの夜』から何曲かアレンジとして入っていますが、その楽曲を選ぶ際に何か基準などはありましたか?

中嶋 聴いたらすぐ「かまいたちの夜」って分かる曲でしょうかね。ゲーム本編に入れたのは、『真かまいたちの夜 Nightmare』(Disc1:1曲目)と『ひとつの推理』(Disc2:21曲目)ですよね。

坂本 しかもすごいのが、あのスーパーファミコンの時代にして、曲の尺がものすごく長いですよね。名前入力の曲『Introduction~レクイエム』(Disc2:25曲目)とかも、プレイヤーは一瞬しか滞在しない箇所なのにものすごく長くて、5、6分ありませんでしたか?

中嶋 あれは、名前入力のところだけは短いバージョンとか作ってやったの。

坂本 そうなんですか。

麻野 これ、エンディングだった曲だ。この曲。

中嶋 うん。でも、ここってふくろうのところの名前入力、しおりのとこでも出ますやん。

麻野 ああ、そうか。

中嶋 ここからガーっと展開していく今回のサントラに収録されている方のバージョンは、誰かが死んだエンディングとか、スタッフロールとかで流れてましたね。確か。

坂本 じゃあ、今回の選考基準はユーザーの反応を見て決めたとかではなくて、多分「かまいたちの夜」の代表曲といったらこんな感じでしょう、っていう具合にチョイスをされたのですか。

中嶋 ですね。そういえば初代『かまいたちの夜』のサントラがどこかのオークションに出ててすごい高値が付いていたり。

坂本 (笑)

麻野 へえ。

中嶋 オリジナルを改めてということであれば、「こんな曲あったっけ?」みたいな曲を入れても多分みなさんがあんまりうれしくないやろなと思ったんで、聴き馴染みのある代表的な曲を入れてみました。

麻野 さっきの曲とかもう、当時のワイドショウのときにもう散々かけられてな。

坂本 ありましたね。

麻野 テレビ付けたら「あれ?なんかどこかで聞いたことあるな」。

一同 (笑)

麻野 ゲーム作ってると、そのゲームのタイトルと時代とがリンクして、その時の自分をイメージしますよね。そのとき、自分、学生やったなぁとか。

中嶋 そう、そう。

麻野 社会人何年目やったとかっていう。

坂本 ありますね。

麻野 それが音楽は特に結び付いてるんで。

坂本 なんででしょうね。

麻野 やっぱり生理的なもんとしてね。においとか音とかは。

中嶋 おれもこれ作ってたときの今、当時2階のサウンドルームみたいなのがあって、横に加藤君おって、ピアノがあってっていう状況思い出しますからね。

坂本 ああ、やっぱり。あとは何と言ってもテーマ曲『かまいたちの夜』(Disc2:22曲目)。

福田 この曲は、でもよくできましたね。

中嶋 ええ。

福田 すごいですよね。

中嶋 これもでも、完成まですぐでしたよ。先ほどのお二人みたいに。

坂本 これ、すぐですか?

福田 へえ、すごいな。

中嶋 降りてきた感じ、なんか。

坂本 えーー!!中嶋さん、絶対自分で作曲されたほうがよくないですか?

一同 (笑)

麻野 座談会の最後間際にそんな、「僕らに頼まんほうがいいよ」ってどういうこっちゃ!

坂本 いやいや!こんなものスゴイ曲、すぐできたら、だって僕らに頼む必要全くないじゃないですか!!

麻野 サントラ買った人、ガッカリするよ。

一同 (笑)

シナリオを執筆するに当たって意識した点は?

-- 麻野さんに質問なんですけれども今作のこのシナリオを執筆するに当たって、何かこだわった点や苦労した点、または音楽と一緒で初代「かまいたちの夜」への原点回帰を意識されたりしましたか?

麻野 自分でシナリオ書くときは全く考えてませんでしたね。曲当てるときも、初代うんぬんっていうのは特に意識はしなかったんですが、あとになって中嶋君とかといろいろ話してると、結果的に初代は作ってるの僕なんで。癖とかやっぱり出るんですよ。例えば、曲をちょっとだけ聴かせてから台詞出すとかっていうのを、おれは一切しない人なんで。

中嶋 「せーの」で出しますよね。

麻野 そう。「せーの」で出すの。その辺で結果的に嫌でも自分の色が出てしまったかなと思うんですけど。テンポがいいのが好きなんで。じっくり読ませたくないんですよ。どっちかっていうと、あれよあれよという間にボタン押す手がつい早まってしまうくらいのほうが僕は好きなんで。

-- 麻野さんが担当された時点で、もうそうなっていると。

麻野 なったのかなとは思いましたね。

一同 うん、うん。

中嶋 『428』とかやってると結構あれでしょ。たっぷりたっぷり間を取った演出をするじゃないですか。

坂本 そうですね。

中嶋 「まだ文字出てこへんのか、ぐらいたっぷりやな」みたいなやつ。

坂本 (笑)

中嶋 みたいなところ、ちょっと取り入れて進めていたんだけども、麻野さんから「ちょっと長ない?」みたいな話があって。結局「麻野さんのテンポに合わせていきましょうか」みたいな話になって。

麻野 全部がそういうふうにはなってないと思うんですけど。でも、かなりの数のウェイトの部分が、『1』のころのペースになってるかなとは思います。あとは何かあるかな。

坂本 一般的には、悲しいシーンは短調の曲とか、楽しいときは長調の曲とか当てると思うんですけど、僕『1』で本当に怖い長調の曲っていうか、音っていうか、忘れられない音があるんですよ…ドアフォンの「ピンポン」っていう音です。

麻野 はい、はい。

坂本 あれひたすら長調なんですけど、状況とすごくミスマッチで心底怖かったんですよね。あれも麻野さんのアイデアですか?

麻野 いや、アイデアもなんも、もともと我孫子さんのしたいように玄関のチャイムが鳴ったっていうふうにしたかったんで。あそこも今でも思い出すのは、2回鳴らすタイミングあるんですよ。

中嶋 そう。はい。

麻野 確か僕がスーファミで『1』作ったときは、1回目は鳴らしてないんですよね。音的には。だから鳴ったか鳴ってないか分からない、「鳴ったかな?」っていうので、2回目は鳴らしてるんですよ。

坂本 へぇー。面白いですね。

麻野 PS版は別の人間がディレクターやってるんだけど、そっちは両方鳴ってるの、確か。記憶違いでなければ。

一同 へえ。

麻野 この辺はやっぱり解釈の違いが出るのかなと思ってて面白いなと思ってるんですけど。事実としては、両方鳴ってるんですよ。でも僕は事実より演出を優先した。1発目鳴らしてしまうと逆に怖くないんじゃないかと思ったんで。「鳴ったかな?」と思わせておいて、「え、まさかこんな人がいっぱい死んでるとこに客なんか来るわけない」と思った次の瞬間にまざまざと鳴ったほうが怖いかなとか、いろいろ考えるわけです。

坂本 うわあ。貴重なお話。

麻野 その辺はどうしたら一番怖くなるか、すごく考えましたね。

坂本 その麻野さんの思惑通りにドンはまりしましたね。僕は。

麻野 ありがとうございます。あれが「ピンポン」じゃなくてもっと別の音だったら。

坂本 いや、でも「ポーン」とかじゃ駄目なんですよ。「ピンポン」は聴いたときにちょっと明るいイメージを持つ音だからすごく怖いんです。

麻野 ああ。裏をいくっていうのは、割と『1』のときには意識しましたけどね。散々人が死んだときに、ものすごいかわいいオルゴールの曲みたいなやつを流して終わって、惨殺されるっていうのは、暗い曲と死体ばっかりだったんで、たまにはこういう逆のも新鮮かなと思ったのでやったんですよね。

坂本 ああ、怖い。

-- 今回はそういうのありますか?

麻野 今回もそういうのチャンスがあったら入れようと思ったんですけど、なかなかなかったのかな。あれも逆にいうとプレイヤーもう、何遍も何遍も同じ目に遭ってるからこそ意味があるんで、最初にやってしまうと、多分違和感しか残らないんで。

中嶋 うん。

坂本 うーん。

麻野 ちょっと構造的に今回、そういう構造にはなってなかったから、やってない可能性はありますね。ただ、細かいところは覚えてないんですが、いい感じのちょっとしたトライみたいなことはしてるんで。

坂本 はい。

麻野 例えばさっきの「ピンポン」もそうですけど、ユーザーから「あそこが怖かった」とか、「あそこはなんとなく不気味だった」っていうふうな感想が来るのをニヤニヤしながら待ってるところはありますけど。

坂本 じゃあ、アプローチが異なっても、そういう仕掛けも今回は入ってるんですね。楽しみですね。

あらためまして・・・

-- 中嶋さんと麻野さんにお聞きしたいんですけど、あらためまして福田さんと坂本さんの曲は、今回いかがでしたでしょうか?

一同 えーっ!(笑)

麻野 今これだけしゃべったのに(笑)

一同 (笑)

中嶋 すごいあらため…

麻野 あらためるなぁ(笑)

坂本 あはは!でも僕と福田さんの曲は、結構毛色が違うと思うのですが。

中嶋 でも、麻野さんどう思われるか分からないけど、まず曲リストがあって、これからこのシーンを編集するぞって時に、別にお二人の曲の色が違うからどうこう…ってあんまり考えないですよね。

坂本 はい、はい。

中嶋 フラットには思います。

麻野 逆にいうと、あんまり考えずに作って、結果もし「坂本さんのしか使ってなかった」とか言われるとすごい嫌だから(笑)

一同 (笑)

麻野 そういうことは全くなかったいう感じ。もちろんその逆も。

福田 ああ、よかったです。安心しました。

麻野 もし使った曲が偏ってたら、すごーくこの場で嫌な感じになってた。

一同 (笑)

坂本 聴いて分かるものですか? 福田さんと坂本のどっちが作った曲なのかとか…。

麻野 いや、全く分からなかった。今回は。

坂本 同じ目的に向かって作ってるものですからね。

福田 確かに目的は一緒なんでね。きっと細かいこと言ってけば作曲は違うとは思うんですけども。でも作品づくりっていう目的は一緒なんでね。

坂本 はい。

福田 もしかしたら意識しなければ、ジャンルが違ったり、そういうことはあるかもしれないけど、ですね。

坂本 いや、もうゲームという作品としては本当に理想的に融合しましたよね。

福田 そうですね。

みなさまにメッセージをお願いします!

-- ありがとうございます。では最後に本作をプレイされるみなさまとこの座談会のサイトを見てくれているみなさまにメッセージをお願い致します。

坂本 正直、僕が担当した曲だけ聴いたら、果たしてこれで『かまいたちの夜』のようなゲームが成り立っているんだろうかとちょっと不安になっていたのですが、あとから福田さんの曲聴かせていただいて「ああ、『かまいたちの夜』になったな」って思いました。そういう意味では、いい意味でミステリーらしからぬ、ふり幅が大きい楽曲がそろったのかなと思います。サウンドトラックとしてのみ聴いても面白いかなという自負はありますね。ぜひみなさん、ゲームと一緒にサントラを買ってください。いま買うともれなく僕と福田さんが抱き合います!(笑)

福田 『かまいたちの夜2』のときは、まだチュンソフトに在籍中でサウンドディレクションをさせていただいたんですけども、シナリオ読んだりすると、とてもインスピレーションがわいてきて曲が作れそうなイメージだったので、内心はいつか『かまいたちの夜』に作曲家としてちゃんと楽曲を作ってみたいなと思っておりました。『3』のときに一部参加させていただいて、今回いよいよこんなにたくさんの曲を書かせていただきまして、夢が叶いました。気合が入ってますんで、ぜひ聴いてください。

-- ありがとうございます。じゃあ、麻野さんお願い致します。

麻野 『かまいたち』の仕事をしたのが久しぶりなんで懐かしかったです。

中嶋 感想(笑)

一同 (笑)

麻野 あぁ、メッセージか。サントラだけでなく、本編も遊んでください。

-- ああ、ありがとうございます。

坂本 どういうふうに麻野さんの手によって楽曲が使われ、リードされているかというところも含めてですかね。

-- そうですね。では、中嶋さん、最後にお願いします。

中嶋 それを確かめるには、ゲームを買っていただくか、サントラを買っていただくしかないので、ぜひぜひっていうところあるんですけれども。ちょっと立場的に言わせていただくと『かま1』のサウンドをどこまで継承するかは、今回当然意識したんですよね。作曲家のお二人にはどこまでお伝えするかを悩んだりしたんですけど、全体の雰囲気を決める曲、メインになるような曲からお願いしつつあがってきたのを聴くと、結果そのコンセプトがしっかり念頭に置かれてるのがわかりましたので、『かま1』とのマッチングとかはこっちは途中からほとんど意識しなくなりました。当然新しいこともやらなければいけないので、ふり幅はかなりあるんだけども、『かまいたちの夜』としてまったく違和感のない楽曲がそろいましたし、新しい『真かまいたちの夜』っていうシリーズがまた始まるという曲がそろったので、とてもよかったかなと思います。ぜひぜひ、お聴きください。

-- ありがとうございます。以上で座談会を終了させていただきます。

エピローグ

坂本 ところで、その青の全身タイツいくらだったの?

川越 3,800円です。

坂本 そんなにするの?高っ!!

麻野 そうなの? 逆に安いと思ったけど。

中嶋 うん、私も。

坂本 ええ、本当ですか。

麻野 っていうか、何に使うものですか? 本当は。この今日の目的以外だと。

中嶋 サッパリ分からないですね。

坂本 いや、これ顔を出す部分が本来開いているんですけども、最初、顔出して僕のところに来て「座談会で着る服、これでいいですか?」って見せるから、「顔が青くないのはマズイだろう。コンセプトと違うよ」って言ったんですね。

麻野 で、前と後ろを逆に着てみたのね。

坂本 はい。

坂本 そしたらうちの女子社員が「青いファンデーションがありますよ!今回の目的にぴったりですね!」って言い出して話が余計ややこしいことになりまして(笑)

一同 (笑)

坂本 川越くん、今日は本当にお疲れ様でした。そのまま一緒に電車で帰ろうね。

川越 はい…。

真かまいたちの夜 11人目の訪問者(サスペクト)オリジナルサウンドトラック

真かまいたちの夜 11人目の訪問者(サスペクト)オリジナルサウンドトラック

音楽:坂本 英城・福田 康文
発売日:2011年12月28日
品番:NCRS 0005〜6(CD2枚組)
価格:2,100円(税抜 2,000円)
発売元:株式会社ノイジークローク
販売元:株式会社スーパースィープ
noisycroak RECORDSで購入する!

「原点回帰」をコンセプトに掲げた『真かまいたちの夜 11人目の訪問者(サスペクト)』にふさわしい
アレンジトラック、
シリーズの新たな展開をしっかりと支えるフレッシュかつミステリアスな楽曲群、
思わず涙を誘う感動的なバラード・・・。
ゲームで使用された楽曲をリマスタリングの上、全曲2ループで収録。
総演奏時間128分、CD2枚組の大ボリュームでお届けします。

そして、なんと!!
スペシャルトラックとして初代「かまいたちの夜」のスーパーファミコン版音源から代表曲4曲を収録!!

初代からずっと「かまいたちの夜」を追いかけている方も、
今作で初めて「かまいたちの夜」の魅力と出会った方も、
「かまいたちの夜」史上まれに見るメロディアスな楽曲群を存分にお楽しみください!

作曲は坂本英城、福田康文氏が担当。
ブックレットには作曲家・坂本英城はもちろん、作曲家・福田康文氏、
株式会社チュンソフト中嶋康二郎氏、シナリオライター・麻野一哉氏のスペシャルコメントも掲載です!!

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